先週の日曜日、実家に帰ったついでに、室津港で生牡蠣を買って帰った。
夫にとっては、生牡蠣を買うのが唯一播州へ赴く楽しみで、冬の定番になっている。
夕飯の席で、殻を剥いて生牡蠣を食べ、ほかは牡蠣のお好み焼きにして食べた。
サトイモも、
「こりゃうまい!」
とどこで覚えてきたのか変な快哉をあげて、パクパク食べていた。
私はその前からの風邪気味で、食は進まなかったけれど、頑張って完食した。
その夜中。
サトイモのベッドで添い寝していた私は、胃部の不快感で目が覚めた。
吐き気がして、トイレで吐く。
お好み焼きらしきものを吐いた。
ひととおり出して、少しスッキリしたかと思ったけれど、まだまだ調子が悪い。
何度も吐く。
トイレ前でしゃがみこんで、休んでは吐き、吐いては休みを繰り返す。
もう吐くものがないのに吐き気だけがあり、身体の奥底から絞り出すようにして吐く。
胃袋をひっくり返すような苦しさ。
全身から血の気が引いて、気分が悪くてたまらなくなり、呼吸が苦しくなった。
その時点で一人ではどうしようもなくなって、リビングのソファで眠り込んでいた夫に助けを求める。
苦しくて立っていられない。
倒れ込んでもがき苦しむ。
脱水か低血糖かもしれない、と夫に砂糖水を作って飲ませてもらう。
しばらくすると落ち着くけれど、やはり吐く。
そして気分が悪くて息苦しくなる繰り返し。
低血糖ならチョコレートがよいかも、と口にするけれど当然吐く。
吐き気止めの頓服薬があったのを飲んでみたけれど、それも吐く。
途中、少し下痢をするけれど、それよりも気分が悪くて苦しくて、息ができなくなる。
全身に冷や汗が出て、冷たくなった手先がしびれ、全身がガタガタと震える。
しばらくそんな状態が続いて、あんまり苦しくてつらいので、どうしたらよいかわからなくなり、救急車を呼んでもらった。
苦しさから少しでも早く助けてもらいたかった。
救急車は5分ほどですぐに来てくれた。
夫に支えてもらいながら、歩いて乗り込んだ。
もう大丈夫ですよ、と救急隊員は声をかけてくれたけれど、すぐに改善するわけでもなく。
苦しくてハァハァ息をしている私に、救急隊員は、
「ゆっくり大きく息をしてください。酸素量は十分ありますからね。過呼吸で苦しくなっているだけですよ」
と声をかけた。
死ぬほど苦しい助けて、と私本人は思っていたけれど、救急隊員の態度からは「たいしたことねーなこれは」感がありありと伝わった。
サトイモを置いて行くわけにはいかないので、夫は家に残り、救急車には一人で乗って行った。
病院についてからもしばらく、のたうち苦しんで、トイレで吐いたりお腹を下したりしたけれど、看護師の対応はのんびりしたもので、トイレ前で這いつくばっている私に、
「あらあら、ベッドまで戻れます〜?」
と声をかけるだけだった。
その後、医師の診察を受けた。
女の子と言ってもいいくらいの、非常に若い女性の医師だった。
といっても、問診と血圧測定くらいで、聴診器を当てたり血液検査をしたりということはなかった。
その後、点滴。
点滴を受けている間にトイレに行きたくなったら困るので、オムツを履かされた。
不思議と全く抵抗なし。
点滴の内容は吐き気止めと水分。
針が入ってものの数秒で意識を失うように、座ったまま眠っていた。
どれくらい眠っていたのか全くわからない。
とにかく点滴が終わるくらいの間だ。
点滴の効果はテキメンで、すっかり気分が良くなっていた。
さきほどの医師が、入院しますか、家に帰りますか、と聞いてきた。
自分の状態がよくわからないから判断できずに黙っていると、
「家に帰って寝たほうがゆっくり休めると思いますよ」
と、帰ることにさせられた。
薬を渡され、保険証を提示させられたのに精算は後日だと言われ、預り金として一万円を徴収させられ、迎えに来てもらえない場合はタクシーで、とタクシーの呼び方を案内された。
着の身着のまま出てきたので、眼鏡もコンタクトもなく、案内板が読めない中、呆然と立ちすくむ。
とにかくスマホと財布だけは持って来ていて助かった。
案内された病院備え付けの無料専用ダイヤルのタクシー会社は、
「今そのへん走ってないですねぇ」
で切られてしまった。
仕方ないので、配車アプリで手配すると3分で来てくれることになった。
初めて来た大きな病院で、入口がどこなのか、今いる場所がどこなのかわからないうえ、車の乗降口もわからない。
心配して来てくれた看護師に教えてもらって、なんとかタクシーに乗って家に帰った。
救急車を呼ぶ基準
回復してから夫とこの夜のことを振り返って、救急車を呼んだことに対する反省をする。
本人的には死ぬほど苦しかったのだけど、じゃあどうしたらよかったのか、はっきり答えは出ない。
子どもの場合は、「#8000」という医療相談ダイヤルがあることを知っていた。
私も一度、サトイモが夜中にじんましんを出したときにかけたことがある。
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大人にもそういう相談ダイヤルはないのかな、と今調べてみたら、やはりあった。
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救急車を呼ぶ前に、こういうところに聞いてみたらよかった。
ちょっとググればわかることなのに。すごく後悔する。
もしくは、アプリから呼べるコールドクターというのが今はあるらしい。
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小児科だけだと思いこんでいたけど、大人もいけるようだ。
安易に救急車のお世話になったことに落ち込んでいる私に、共犯者の夫は、
「でも、点滴してもらえたから助かったんやろ。結果、それでよかったやんか」
と意外と前向き。
正直、夫がいてくれてどれだけ助かったかしれない。
一人で苦しまずに済んだことだけでなく、救急車を呼んだとしてもサトイモを残して行くわけにはいかない。
どちらにしても途方に暮れただろう。
食器の選び方とか洗濯の仕分けとか、本や映画やエンタメに関するちょっとした考え方の違いで、夫婦は衝突したりすれ違いがちだ。
私はすぐに、
「年取ったら絶対離婚するぞ」
と考えがちなのだけれど、病気をするたびに夫には感謝の念が増す。
サトイモができなかったら結婚しなかった二人だけど、そうやって家族になっていくのだろう。
起きてから事態を知ったサトイモは、
「ボクも救急車に乗りたかった!今日も救急車呼んで!」
とゴネた。
アホか。
↑上記はサトイモが2歳のときに近所の消防署で救急車を見学させてもらったときの写真。
いざ乗ってみると、中の設備なんか何も覚えていない。