1月2日
昨年夏頃の父はひどく覇気がなかったが、秋以降だんだん活気のようなものが出てきた。
ケアマネさんとヘルパーさんが気の利く方々で、父が朝の薬を飲めていないことを主治医に伝えてくださり、昼食後以降に飲めるよう処方を変えてもらったのが大きいかもしれない。
ちゃんと飲め!と命令するばかりの私とは大違い。
そんな皆さんのサポートもあって、父はお正月も元気だった。
ただ、なんか臭い。
「お父さん、すごく臭いけど、おしっこ漏れてない?」
ときくと、
「大丈夫や」
と答える。
いやいや、絶対大丈夫ではない。
「ほんまに?」
「ほんまに大丈夫や。オムツしとうもん」
「オムツに出てるやろ?交換してもらわんと、周りが臭くてかなわんわ」
「ほんまに?臭うか?」
「だから臭いって言うてるやん!!!!」
ようやく交換にこぎつけた。
やれやれ。
使用済みのオムツは防臭ゴミ袋に入れてね、と頼んでも、「大丈夫や」で済まそうとしたので、
「大丈夫かどうかはお父さんが決めることではありません。臭くて困っているのは私達ですから、お願いなので防臭袋を使ってください」
とキツめに注意する。
渋々応じる父。
普段からもヘルパーさんが臭い思いをするのは気の毒すぎるから、ちゃんと袋を使うように、と何度も説得する。
1月11日
というような、2日の日記を書きかけた。
現在、1月11日午前11時半。
新快速電車に乗っている。
出勤してまもなく、ヘルパーさんから電話があった。
訪問すると、父がキッチンで倒れていたので救急車を呼んだとのこと。
意識不明らしい。
会社を早退。
ひとまず自宅に向かっている途中、再び電話。
搬送先が決まったのと、心停止しているとのこと。
サトイモをお姑さんに預ける段取りをしようと考えていたが、やっぱりお迎えに行って一緒に連れていくことにした。
「走っていこうよ!じいじがかわいそうだよ!救急車で病院に行ったんだから、助かるかもしれないよ」
とサトイモが言うが、心停止と聞いて、もう急ぐ必要はないよなと思う。
ただ、ヘルパーさんが病院の救急外来で待ってくれているらしいので、早くいかなければ。
年末、父が私に話があると言って呼び出した。
「俺ももうそろそろお迎えが来ると思うから、そのときは家のことは好きにしてええ」
「はぁ?! 話って、たったそれだけ?!」
まさか、それが本当になるなんてね。