奇才サトイモの元気が出る発達日記

発達障害(ADHD&ASD)の疑いがある息子サトイモの子育て日記です。

コーヒーとお菓子の魔法

父の病院の地域連携室から電話がかかってきたのは、2月22日のことだった。

病院から電話があると、父に何かあったのかと毎度ドキドキするけれど、この日は、退院後の提案だった。

病院と連携している老健施設に入らないか、というお誘いだ。

行き先なんて何も決まっていないし、受け入れ先がなかったらどうしよう、と不安でしかなかったので、申し出をありがたく受け入れた。

2月24日に主治医から今後の方針について面談を受けたあと、施設の見学をして説明を受ける約束で電話を終えた。

 

チューブが抜けた!!

2週間ぶりに父に会うと、なんと経鼻栄養のチューブが抜けていた。

食事は口から食べているらしい。

 

主治医との面談では、やはりそこが主なポイントだった。

今は口から食べられているが、今後肺炎になったり、食べられなくなったときどうするか。

私は正直に、チューブの不快感から余計に食べられなくなっている気がするし、チューブを抜こうとするから手を縛られることで、生活の質が下がってしまうのは本人にとってよくないと思う、と訴えた。

主治医は、80代後半にもなってくると食べられなくなるのは当然なことで、そこで無理にチューブを入れず、自然な死を迎えるのは悪いことではない、という意見を話してくれた。

いわゆる’平穏死‘的な考え方を話してくれたのは、この人が医者では初めてかもしれない。

「急性期病院では1秒でも命を取りとめるのが使命ですけどね、老人施設では必ずしもそうではなくて、食べられたら食べたらいいし、食べられないなら無理に栄養を入れなくてもいいし、ご本人が望むように過ごされたらいいと思いますよ」

主治医のそんな話をきいて、なんだかとてもホッとした。

経鼻栄養をさせないと言うと、親の命を捨てるかのようなプレッシャーを感じていたが、そこから解放された気がした。

 

その後、父に会いに言った。

ずいぶんしっかりとしていた。

尿のバルーンをつけていて、車椅子に乗っている以外は、ほぼ入院前に戻っている印象だ。

 

この日は夫とサトイモも一緒に来ていて、談話室で一緒に過ごした。

父にはトロミをつけてもらったコーヒーを飲ませた。

サトイモに、持参したお菓子を食べさせていると、父も食べたいという。

「ほんまに大丈夫?むせて死なへん?」

と言いながら、看護師に見つからないようにぱりんこを食べさせたら、普通に食べられた。

 

老健施設への入所を提案してくれた看護師が電話で、

「すごいですよね。チューブを抜きたい、食べ物を食べたい、という気持ちがあれば頑張れるんですね。やって来られたときの状態から考えると、信じられないくらいの回復です」

と言っていたのを思い出す。

たいしたもんだ。

 

老健施設の見学

その後、病院の看護師に案内してもらって、私一人で老健施設へ入所の説明を聞きに行った。

病院から徒歩2分くらいの場所で、商店街の中にある施設だった。

 

「病院は新しくてキレイですけど、こちらは古くてすみません」

と応対してくれた施設のスタッフが言った。

「そんなことないですよ」

と言ったものの、エントランスだけはリフォームしてキレイだったが、居住しているフロアやリハビリルームは少し老朽化しているのを感じた。

古い施設にありがちな、なんとなく暗い雰囲気もある。

 

何より気になったのは、リビングのような場所にテレビが1台だけあり、個別にはテレビがないという点だった。

テレビ好きな父が、チャンネル権を持たずにやっていけるだろうか。

 

とはいえ、リハビリ病院を退院させられた後の行き先として、ひとまずここに入所するしかない。

 

その後、手続きの説明など事務的な話をして、ちょうど一段落したところ、夫とサトイモがやってきた。

夫はすごく不機嫌で、

「病院で2点怒られた。面会時間は正午までということ、中学生以下は面会禁止ということ。看護師に、なんであんたらここにおるん!という顔でにらまれたで。そういうルールは先に教えてとってくれ」

と私が怒られた。

 

電話をかけてくれた地域連携室の看護師は、子供を連れて行くことを了承してくれて、

「お孫さんに会うのが一番の薬でしょうから」

と言ってくれたのだけど、個人的な見解だったのかなぁ…。

これからは見つからないように連れて行こう。

次の老健施設では自由に面会できるのだろうか。そこを尋ね忘れていた。

 

隠れ食い

サトイモは夕方家に帰ってくると、まずお菓子を食べる。

ダメな習慣が身についてしまった。

「お腹空いたよぅ。ペコペコだよぅ。これ食べていい?おねが〜い!」

そう言われると、つい許可してしまう。

一口食べると呼び水になって、次から次へと食べる。

私がやめさせると癇癪を起こし、お菓子を取り上げてケンカになることもある。

私が夕食を作り終えた頃にはお腹が膨れてしまい、食事を残す。

ハッキリといらない、ごちそうさま、と言えばよいのだけど、途中から遊び始めるから私が激怒する。

毎日の課題だ。

サトイモに我慢させられない躾の問題でもあるし、私の食事提供の段取りが悪いせいもあるが、なかなか改善できないでいる。

私も帰ってきたら、つい一緒になってお菓子をつまんでしまうからだ。

だってお菓子って美味しいんだもん。

 

先週、父の見舞いに行くと、父はやはりコーヒーを飲みたがり、お菓子を食べたがった。

コーヒーを持参してきたので、トロミをつけてほしいと依頼すると、看護師から、

「これからはトロミ剤を用意してもらえますか?」

と言われた。

仕方ないので、ドラッグストアにトロミ剤を買いに行き、ついでに父が食べたがったお菓子を買った。

 

買ってきた明治チョコレートとハッピーターンを、こっそり父に食べさせた。

ハッピーターンを食べたとき、少しむせたのであせった。

もしや、ハッピーの粉が誤嚥性肺炎の原因になってしまうのでは?!

けれど、本人は、

「大丈夫や。もう一個くれ」

と食べる気満々。

こそこそと、かつ慌てて、それぞれ2個食べた。

 

今日の土曜日も、お菓子を持って父を見舞う。

紗々チョコレート、アンパンマンビスケット、神戸元町商店街花見屋のあられを持参したら、あっという間に全部食べてしまった。

先週持ってきたインスタントコーヒーのスティクは全部飲んでしまったという。

仕方ないので近くのファミマまで慌てて買いに行く。

 

これだけ食べられるようになっても、まだトロミは必要だし、食事はミキサー食らしい。

「こないだから、おじやがでるようになったけどな。食事がまずいわ」

と父は文句を言っていた。

 

サトイモが3歳くらいの頃、ご飯をあまり食べなくて悩んでいたことがあったが、誰かに、

「ご飯は食べなくてもお菓子は食べるんでしょ?じゃあ死なへんやん」

と言われ、そういえばそうか、と気がラクになった。

父も、お菓子が食べられるうちは死なないだろう。

 

姫路のヌード銅像

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父の病院へ行く途中の通りには銅像がたくさんある。

みうらじゅんが「ヌードサックス」「黒川さん」と呼ぶヌード銅像(略して「ヌー銅」)もある。

ヌード銅像はなぜか兵庫県に多いとみうらじゅんも言っていた。

姫路は特に宝庫。

毎週、お見舞いのたびにいろんなヌー銅を見るのも私の密かな楽しみ。