入学式の前日、私とサトイモは登校リハーサルを行った。
それ以前にも散歩がてら通学路の確認をしたことはあったが、一度朝の同じ時間に歩いてみることにしたのだ。
小学校まで何分かかるかだけでなく、歩いている小学生たちの服装や持ち物、交通安全の旗振りをしている地域ボランティアのおじさんおばさんがどこに立っているか等、いろいろ参考になった。
特に、町内会の婦人会長をしている近所のおばさんが旗振りをしているのを発見し、
「来週から一人で登校しますので、よろしくお願いします」
とあいさつした。
知っている顔がある、というのは強い安心感を与えてくれる。
神戸の街なかには、田舎以上に地域社会が残っていることに感謝する。
そして初登校。
サトイモは目覚まし時計より早起きし、「一人で大丈夫だよ!」と張り切って出かけて行った。
登校リハーサルをしたせいか、サトイモは自信満々。
初日は親が校門まで送っていくのがほとんどだというのに、
「もうここでいいよ!ついて来ないで!」
と私を振り切って走っていった。
2日目も、3日目も。
ところが、週末をはさんで月曜日。
「ずっと家にいる。もう小学校行かないよ」
めちゃくちゃに泣いてゴネた。
‘土日のように家で遊びたい病’だ。
怒ったりなだめすかしたり冗談を言ってごまかしたりしながら、なんとか用意をさせたが、サトイモは朝食抜き、私はすっぴん眼鏡。
それでもなんとか定刻に家を出た。すると、婦人会長が歩いているのを発見。
「一緒に行こう!」
と無理やりご一緒した。
「子どもだけのときはあかんけど、大人が一緒やから特別に近道しよう」
と学校指定通学路ではないショートカットを行く。
「こっちが昔の通学路やったから、地面に印があるやろ」
「ここ曲がるんがおばちゃんだけの秘密の抜け道」
「この木は食べられるサクランボがなるんやで」
などと教えてもらう。
サトイモはすっかり泣き止んで、機嫌が戻る。
これなら大丈夫か思ったけれど、校門をくぐったところで止まってしまい、行きつ戻りつ、何度も私にしがみついたりして、なかなか進まなかった。
幼稚園ならこういうとき、先生方が抱っこして引き剥がしてくれたのだけど、小学校ではそうはいかない。
何度目かのハイタッチのあと、なんとかサトイモは校舎へ入っていった。
ミスリード連発!
入学説明会も出席したし、入学式のあとに説明もあったし、資料はだいたい読んだけれど、それでも私は不安だらけだった。
本当に持ち物はこれでよいのか、間違っていないか、誤解してないか…。
2人だけママ友がいて、情報交換してくれたからよかったけど、2人がいなかったらもっとめちゃくちゃだっただろう。
初日、帰ってきたサトイモに、
「ママ忘れ物してたよ」
と言われてドキッとした。
「何何?!何を忘れてた?!」
と尋ねると、水筒だという。
水筒?!
持ち物リストに水筒なんて全く書いてなかったけど?!
どうやら、水筒を持っていくのは今どきの小学生の常識らしい。
確かに、幼稚園でもどこの教室でもお出かけするときは水筒持参だったけど…。
学校が指示するもの以外は持ってこないのが学校のルールだと思っていたから、そこだけ自己判断かよ!と納得がいかなかった。
そのあと、学校から電話がかかってきた。
日本スポーツ振興センターなんちゃら給付制度と学校園安全なんちゃら会の加入同意書についてだった。
「加入しませんに丸をつけられているのですが…」
「はい、うちは民間の傷害保険や医療保険に入ってますので」
「あの、こちらの保険は本校では全員加入されているものでして…」
「あれ??任意じゃありませんでしたっけ?」
「任意です。任意なんですけど…、学校でケガをしたときに、誰が加入していて誰が加入していない、と確認するとなると難しいので…」
「あ、そゆうことですね!わかりました。入ります」
正直、うちは他にも保険に入っているから不要だと思ったけど、先生方の事務処理軽減のためにも同意することにした。
だったら、同意書に「任意」って書かないでほしいよなぁ!とブツブツ言いながら入学説明会の資料を再読すると、はっきり「全員加入をお願いしています」と書かれていた。
その後、また判断に迷う案件が出てきた。
入学説明会の資料には、
「元気タイムがある日は体操服を着て登校」
と書いてあり、予定表には元気タイムは火曜日と記してあるのに、連絡帳には体操服を着てくるようにという指示がない。
着るべきか、着ないべきか。
ママ友に聞くと、たまたま先生に尋ねる機会があったらしくて尋ねてくれた。
「1年生はまだ元気タイムが始まっていないので、普通の服で大丈夫です」
とのこと。
1年生はまだ元気タイムがないとか、そんなことも書いてくれないとわからないよ!
ていうか、元気タイムって何だよ。
ほかにも、「全ての物に名前を書いてください」と書いてあるので、持ち物リストにあるもの全部に名前を書いたら、ぞうきんを持って行く前日に「名前は不要です」と注意書きが出る等、こまごまとした「わからないこと」が続いた。
夫に、
「入学式のあと教室で説明があったけど、わかりにくくなかった?」
と同意を求めると、
「最初は話聞いとったけど、ようわからん下手な説明で聞く気が失せて、途中から聞いてへん」
と言う。
二人で聞いてるからちょっとくらい聞き逃しても大丈夫と思ってたのに!
「大人でもようわからんかったのに、子供がわかるわけないな。忘れ物するな言うても無理や」
学校なんて毎年同じことの繰り返しのはずなのに、ブラッシュアップされていないのはなぜだろう?
神戸の学校はさすが多国籍で、いろんな人種の子がいる。
日本人ですらわかりにくいのに、外国人の親は大丈夫なんだろうか。
私は毎日忘れ物がないか不安だけど、サトイモ本人は何も考えてないのが救い。
注意されたって怒られたって、気にせず平気に学校生活を送ってくれたらそのほうがいい。