サトイモの小学校は土曜日に運動会の予定だったが、雨で翌日の日曜日に延期になった。
どちらにしてもサトイモには関係ない。運動会には不参加なのだから。
なのに、夜寝る前、サトイモが、
「赤組白組、どっちが勝つかなぁ~?ドキドキするね~!」
と言い出したので、ビックリした。
「えっ!?ちょ、ちょっと待って!!う、運動会、もしかして、行くつもり!?」
「行くわけないや~ん!」
ああ、よかった、今さら参加するって言われたらどうしようか、本気でビビった。
「それやったらなんでドキドキするの?」
「だって、どっちが勝つかなぁって思って。ボクは白やけど、赤が勝ちそうな気がするなぁ」
「自分が休むから、負けるんちゃうかっていうこと?」
「違う違う!そんなんじゃないねん!」
私にはその感覚がさっぱりわからなかった。
自分は参加しないのに、結果が気になる?
「じゃあ、来週学校行ったときに結果を教えてもらお。楽しみやね」
何でもいいから、ひとまず学校へ行く目的を作らないと。
将棋教室はじめました
将棋が好きなサトイモ。
しょっちゅう私に「将棋しよう」とせがむので、ときどきさすけれど、だんだん強くなってきた。
去年の今頃、町内会の囲碁将棋クラブに参加していた。けれど、クラブの先生が入院してしまって、今はクラブが閉鎖中である。高齢者ばっかだったからなぁ…。
どこか将棋を教えてもらえる場所はないかと探していたら、こども向けの将棋教室が見つかった。
月に2回実施で、この日曜日(運動会の日)が2回目の参加だった。
子どもたちはだいたい7,8人。
先生1人が4人と同時に対局しながら指導し、残りの子たちは子ども同士で対局する。
みんな口々に「先生と対局したい!」と言って、4人に入りたがり、子ども同士ではさしたがらない。
サトイモも同じ。先生との対局はとても面白いらしい。
ところが、子ども同士で対局しましょう、ということになったら、すーっといなくなって、机の下に隠れてしまった。
相手の子どもは待ちぼうけ。
私は頭にきてしまって、声をかけにいった。
「そんなとこで何してんの?」
「だって…、イヤだから」
「ほんならもうやめて帰るか? 帰るなら、先生に『体調が悪いから帰ります』って挨拶して出なさい!」
と指示をした。
サトイモはそのとおり、先生に挨拶をしにいって、二人で教室を出た。
でも、私の怒りは収まらない。
逃げ根性が癖になっている
将棋教室に行く前、サトイモは少し行き渋りをした。
「先生との対局は楽しいけど、ほかの子に負けるのが嫌。あそこの子たちは強いんだもん」
「ずっと習ってる子たちが強いのは当たり前でしょ? サトイモも教えてもらってやってるうちに強くなるよ」
結局、「ほかの子に負けるのが嫌」が机の下に隠れるという行動に出てしまった。
私と将棋をさして負けても、町内会の囲碁将棋クラブでおじいさんたちに負けても平気だったのに、同世代の子どもに負けるのはプライドが傷つくようだ。
だからって逃げるなんて。
このいくじなしが!
将棋自体が勝負の世界なのに、勝負から逃げるなんて。根性がなさすぎる!
そんな奴が二度と将棋なんかさすな!二度と私に「お母さん将棋やろう~」なんて言うなよ!
家に帰ってからも、私は怒りでいっぱい。
無為の月曜日
運動会の代休で、月曜日は小学校がお休み。
「今日は午後からバンドー青少年科学館にでも遊びに行こうか?」
と私は朝からサトイモに提案していた。
ところが、私のスマホのリマインダーが鳴って、事態は一変する。
「あ、ごめん、今日は3時から放課後等デイサービスに行く予定やったん忘れてたわ!」
月曜日はふだん行く曜日ではないけれど、キャンセルが出たら通わせてください、とお願いしていたら空きが出たのだ。
それで放デイの予定を入れていたのに、私がすっかり忘れていた。
サトイモにも伝えたはずだけど、サトイモはもとから予定など覚えちゃいない。
科学館に行く予定がつぶれてしまって、サトイモが文句を言った。
「嫌だよ、行きたくない!」
「ごめんごめん、予定を忘れていたお母さんが悪かったわ」
「じゃあYouTube見せて!」
「わかった」
そこで私は予定を組んだ。
「じゃあ、2時までYouTube見ていいよ。2時になったら、一緒に白玉団子を作っておやつを食べて、3時になったら放課後等デイサービスのお迎えが来るからね」
このとき、この予定を口頭で軽くしか伝えなかった私が悪かった。
ホワイトボードなどに書くことをしなかったのだ。
「2時になったよ。そろそろYouTube消して、一緒にお団子作ろう」
「嫌だよ。お団子なんて作りたくない!お母さん一人で作って」
「お団子作っておぜんざいに入れて食べようって、楽しみにしてなかった?」
「だからお母さんが作って!ボクは作らない!YouTube見る!」
「何言うとんねん!!そんなんやったらおやつ抜きじゃ!!」
私は私で、Amazonプライムでこの日視聴期限を迎える『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』を慌てて見ていたので、サトイモがゴネたのをこれ幸いと、おやつ作りを中止した。
そりゃ、団子づくりより三島由紀夫でしょ。
しかし。
なぜこのとき無理やりにでもYouTubeをやめさせて予定を実行しなかったのか、後になって悔やむことになった…。
というのも、3時になってもサトイモはYouTubeをやめられず、玄関まで出たものの、放課後等デイサービスのお迎えの車に乗るのを拒否。
「嫌だよ行きたくないよ!誰がいるかわからないのに行かないよ!」
お迎えに来てくれた先生が、「〇〇ちゃんも来るよ、△△さんもいるよ」と声をかけてくれても全く聞く耳を持たない。
結局、放デイを休むことになった。
…それやったら、YouTube見ただけの一日やん。
放デイをキャンセルして科学館行ったほうがよかったじゃないか…。
もちろん、私は鬼の形相。
おのれ、サトイモに放デイに行かなかったことを後悔させねば気が済まん!
いかにして思い知らせてやろうか!!
ということで、そのままサトイモを家から閉め出して一人でスーパーへ買い物へ行く。
当然、そんなことで思い知るようなサトイモではないけれども。
子どもは遊びが大事
昨夜の夕食の席で反省会。というよりはサトイモの断罪裁判。
夫には裁判官になってもらった。
「サトイモ、なんで約束守らへんかったん?」
「行きたくないのに、なんで行かなきゃいけないの」
「放デイしかあんたが友達と遊べる機会がないからや。学校行ってないから、友達おらへんやろ? 友達と遊ぶこともないまま大きくなったら、ろくな大人にならへんからや。友達と遊ぶことが、子どもには勉強より大事なんや」
「友達おらんことない!学校の中休みに遊んどう!」
「遅刻早退ばっかりやのに、中休みの時間は学校おらへんやろ!」
「そんなことない。遊んでないと言えんことはない!」
「なにその政治家みたいな回りくどい言い訳!!かっこわる!!はっきり言え!」
「中休みに遊んでる!」
「言うたな!ほんなら明日、絶対、中休みに学校おれよ!!」
家入れたらへんぞ
今日もまた、朝はめちゃくちゃ行き渋った。
でも、朝イチでYouTubeを見て、見た以上は学校に行くという約束なので、サトイモはとりあえず家を出た。
校門前で引き返そうとするところを、無理やり手を引いて教室まで連れて行った。
目をつぶったまま歩くサトイモ。
「どこに行くのかな~? 公園かな~?」
サトイモはすっとぼけてアホなふりをしている。教室に決まっとるやろボケが。
「昨日エラソーに中休み学校で遊んでる言うたんやからな。学校で遊んで帰れよ。途中で帰る言うても家入れたらへんからな」
私はサトイモの耳元で脅し文句をささやいてから、担任の先生にサトイモを引き渡した。
…わかってる。
私がやってるのは、ぜーんぶ間違ってる。
行きたくないというサトイモの意見を尊重すべきだし、気持ちに寄り添って、穏やかに説得するのが大人の対応。
家から閉め出したり、脅したり、怒鳴ったりするのは全部よくないことだ。
わかってる。
けど、腹が立って腹が立ってしょうがないのだ。
嫌だといったら全部免除されるのか?
すべてから逃げていいのか?
こっちはおまえの子育てから逃がしてもらえへんやんか。
まるで気に入らない。
…でも、これを書いていたら、もう中休みの時間を過ぎた。
まだ学校から電話がかかってこない。
帰ってきたら抱きしめてほめてやらねば。
