奇才サトイモの元気が出る発達日記

発達障害(ADHD&ASD)の疑いがある息子サトイモの子育て日記です。

これがあの子の生きる道

「全体的な数値は去年より落ちていますが、依然賢いお子さんであることには変わりありません。ただ…」

と専門家の先生はテスト結果を話し始めた。

去年から1年2ヶ月ぶりに受けた、サトイモの発達検査についてである。

昨年は130あったトータルIQは、今年120に落ちていた。

今年IQが伸びていたらもしかしてギフテッドかも、とも思ったけど、120なら凡人、普通の発達障害である。

 

点数が落ちた大きな原因は、単語力と言葉の理解力が去年から伸びていないこと。

点数はは年齢に合わせて算出されるので、去年と同じ問題しか正答できなければ、当然数値は落ちる。

相変わらず、人に関する抽象名詞(「立派」など)の問題は全滅だった。

 

理解度に関する問題については、

「パンは何からできていますか?」

が答えられなかった。

しかも、

「パン?パンっていっても、いろんなパンがあるけど、何パンのこと?」

などと理屈をこねまわして、結果答えられないというイサギ悪さ。

ジャムおじさんは一体何をこねてると思ってアンパンマンを見ていたのだろうか。

 

また、「手紙とはどういうものですか?」という問題について、サトイモは、

「封筒に入れて切手を貼って、ポストに入れて、郵便車が回収に来て、郵便局に集められて、配達バイクの人が家のポストに配るもの」

と答えたという。

一瞬合っているように思えるが、これでは手紙ではなく郵便システムの説明である。

 

「手紙は人と人がやりとりするもの、という点にこの子は興味がないのです。興味関心がシステムにあって、人には興味が行かないのです」

と専門家に一刀両断されてしまった。

「ですので、世界の見え方が独特です」

 

確かに、大谷翔平のホームランがバックスクリーンの奥に消えるシーンを見たときのサトイモの感想は、

「大谷すごい!」

ではなく、

「あのボールはこのあとどうするの?」

だった。

まさに独特の視点。

 

加えて、昨年ダントツにできた迷路問題がそれほどできなかったことによる減点もあった。

「去年もやった問題やと思って、簡単やとナメたんでしょうね。慎重さがなく、簡単に進んで間違えることが多かったようです。それでもこれだけできたんだから、まあたいしたもんですが」

と、サトイモの物事をナメる傾向を見事に言い当てた。

 

去年と違って、今年は設問に対する聞き直しが多く、

「今なんて言った?」

とよく尋ね直していたという。

落ち着きもなく、よく動いていたようだ。

 

唯一朗報だったのは、突出してできている幾何図形だった。

確かに、最近は迷路で遊ぶことが減って、図形パズルをよくやっている。

タングラムは大人でも難しい問題に挑戦しているし、解くのも早いから、良い点が取れたのかもしれない。

素人の私が点数表を見ると、「ああ、よくできたのね」と思っただけだったが、専門家は、

「ほとんど全問正解、ここだけならIQ190くらいあります」

と言った。

 

この子の将来は決まったようなもの

専門家から、来年どこの小学校に進むのか尋ねられ、地域の公立小学校の名前を答えたら、

「普通級、特別支援級、どちらをお考えですか?」

とさらに尋ねられ、私は戸惑った。

これまで全然、特別支援級を考えたことはなかったからだ。

おずおずと、

「普通級で、通級指導教室は引き続き通おうと思っているのですが」

と答えると、

「それがいいでしょうね。その小学校の特別支援級は知的支援だけで情緒の支援はなかったはずですから」

と専門家は言った。

「情緒の特別支援級があればよいのですが、まだまだ導入している学校は少ないですからね。この子に必要なのはSSTソーシャルスキルレーニングですよ」

と、西宮にあるソーシャルスキルレーニングをやっている教室をすすめてくれた。

人気かつ狭き門なので、早めに申し込んでおかないとなかなか入れないらしい。

 

「小学校に入っても、まあ、いろいろと問題は起こすでしょう」

と専門家はキッパリ言ってのけた。

「でも、好きなことをさせてあげてください。機械が好きなら機械のことを突き詰めて、研究者になったらいいんです。この子の将来は決まったようなもんです。研究者の道ですよ」

と決められてしまった。

何を勝手な、と思わなくもないが、私もそれしかないだろうなと思う。

 

専門家はその後、〇〇だけに詳しい「〇〇博士ちゃん」として幼少期を過ごした変わり者が、大人になって研究者として大成した例をいくつか挙げた。

私も、さかなクンのお母さんが、さかなクンが小学校に魚類図鑑だけ持参し、教科書を持っていかなくても許していたらしい、という話をし、

「私もそれくらいの覚悟をしないといけないのかな、と思っていたんです」

と言うと、

「それですよ。機械クンになればいいんです」

と専門家は笑顔で答えた。

 

そのうえで、専門家がボロリと、

「こういう子は、頑張って灘に入れたらいいですけどねぇ」

とこぼした。

「灘に入ったら、こういう子がゴロゴロいます。仲間ばっかりですよ。あそこはやっぱり普通の私学やないです。先生の教え方も上手。そういう子が多いから先生も慣れてはるんやろね」

そりゃあ、灘中に入れたらどんなにいいか!

灘に入れたら、中島らもの後輩になれるじゃないか!

「でもセンセ、うちの子みたいなIQ120程度の子が入れますでしょうか?」

「それはどんな子も頑張り次第でしょ」

それ以上ないくらいの正論。

 

小学校ってどんなとこ?

「それもまあ、小学校の先生が、どれだけ理解して対応してくれるかですね」

神戸市中央区の小学校は、中国人をはじめ外国人の子どもが多いため、比較的、多様性を受け入れてくれる自由な雰囲気がある、とは聞く。

ただ、小学校という場所がどれほどルールに厳しく、許容度が低いのか、行ってみないとわからない。

あれをしちゃダメ、これをしないとダメ、と言われたら、きっとサトイモは登校拒否をするだろう。

最近の私は、サトイモが登校拒否をすることを前提に、登校拒否児に対する対応方法をYouTubeやネットで調べているところだ。

自分がゆたぼんチャンネルを参照する日が来るとは。

 

専門家が言うには、

「たぶんこの子は、学校の勉強はやるでしょう。やって時間を余して退屈になるから問題を起こすんで、やるべきことをやったあとは机で好きなことをやってもよい、と先生が割り切ってくれたらなんとかなります」

とのことだ。

授業をきいてなくても、ほかの子に迷惑をかけないかぎり目をつぶってください、と入学前に小学校の先生にお願いしなきゃなぁ、と私は思う。

あと、教室を抜け出すなら、先生に一言伝えてから職員室か保健室に行くように、とサトイモに言い聞かせないとなぁ…。

 

小学校入学がだんだん近づいてきて、不安が具体的になってきた。

「入学前に病院で診断を受けたほうがいいでしょうか?」

私はもう一度専門家に尋ねた。

「必要ないでしょう。診断名がつくだけですよ」

診断名がつくことは間違いないのか…、と軽くショックを受けつつ、診断名があったほうが学校も納得して対処してくれるんじゃないか、と思ったが、

「この結果だけでだいたいわかります」

という。

そんなもんかなぁ。