私の小学生時代とサトイモとでは時代も地域も違うから、日々ギャップだらけだ。
神戸の学校は土足なので上履きもなし。給食は先割れスプーンがなくマイ箸持参、給食当番の服は貸与制、などなど。
私の小学校には制服があったけれど神戸は私服。
私は制服だから体育のときに着替えないといけなかったけれど、神戸では体育がある日は朝から体操服を着て行くことになっている。
この体操服が悩ましい。
おとといの火曜日はめちゃくちゃ寒くて、服選びに困った。
長袖体操服(上)は持っているものの、下の長ズボンを持っていなかった。
入学時の体操服販売のときに、
「どれくらい大きくなっているかわからないから、長ズボンは秋になってから買おう」
と考えていた。
まさか、秋の体操服販売のときには完全に不登校になっているなんて思わなかったし。
仕方なく、サトイモに長袖と半ズボンを着るように言うと、
「半ズボンやったら半袖じゃないとおかしい!」
と謎の抵抗にあった。
恐るべきことに、夫も「その気持ちはわかる」と言う。
がんとして長袖を着ないので、私が折れて、半袖半ズボンに、
「せめてパーカーだけは羽織ってくれ!」
と上衣を着させて登校させた。
小学男子たるもの半ズボン
発達障害がある子どもに見られる特性の一つに、感覚過敏や感覚鈍麻というのがある。
サトイモの場合、感覚過敏も感覚鈍麻もあんまり感じたことはない。
まれに大きな音をうるさがったり、遊びに興奮しているとケガをしてもあまり痛がらなかったりするけれど、程度は小さい。普通の人でもうるさいと感じるレベルだったり、集中したら痛みもまぎれるよね~、と理解できる程度のレベルだ。
首をひねるのは、寒さ。
私がめちゃくちゃ寒がっていても、サトイモは平気なことが多い。
「今日は寒いからもう一枚着なさい」
と言っても、
「全然寒くない!むしろ暑いくらいや!」
とサトイモはつっぱねる。
ただ、このやりとり、周囲の親子もだいたい同じことをやっている。特に母親と男子。
かつて私は職場で、男性社員とエアコン設定温度争いをやっていた。
身体の代謝の両極端がやり合っているだけなんだろうか?
登校中の子どもたちを見ても、半袖や半ズボンの子がけっこういる。
発達障害の感覚鈍麻ではなく、子どもは風の子なだけ?
夫も小学生時代は一年中半ズボンだったと言っていた。
思い返せば昭和の小学生男子はそうだった気がする。
寒くないんですか問題
忘れもしない、去年の11月16日。
友人の弘川よしえちゃんが兵庫県議会議員補欠選挙に立候補して、投票日の前日の夜、阪急園田駅の前でマイクおさめの街頭演説をした。
私は応援のために見に行ったのだけど、前に立っていた人が半袖Tシャツ一枚だった。友人の知り合いの中年男性。
11月中旬の夜、私は寒くてパーカーのジッパーを閉めて震えていた。
「寒くないんですか?」
思わず尋ねてしまった。
「え?暑くないんですか?」
その人は言った。
友人が、うなづきながら、
「ま、そういうことやな」
と言った。
そういうことなのか…。
夫がアメリカに出張していたとき、
「冬物の長袖パーカーを着て仕事をしている黒人がおるのに、半袖Tシャツ一枚の白人もいて、寒いんか暑いんか、めちゃくちゃや。他人を見てもわからん」
と言っていたことを思い出す。
白人の平熱は我々モンゴロイドとは違って37℃くらいあるらしい。
何を着れば正解かは自分で決める。自分は自分、ということ。
サトイモも、本人が寒くないと言っているんだから、寒くないんだろう。
また早退
と、本人の好きなように薄着をさせていたら、昨日はまた小学校を早退した。
しかも1時間目から。
学校に着いて早々、お腹を壊してしまったらしい。
ほら見てみぃ、昨日薄着でいちびってたからや!
本人が寒さを感じていなくても、身体は冷えていたわけだ。
風邪をひいてもおかしくない寒暖差だから、下痢程度でよかった。
そしてのんびり自宅で昼食を食べていたら、私のスマホのリマインダーが鳴った。
病院の受診日なのをすっかり忘れていた!!!
予約を取ったときは、まさか学校へ行けるようになっているとは思わなかったので、平日の真昼間に予約を入れてしまっていた。
たまたま下痢で早退していたからよかったものの、ちゃんと学校にいたら予約をすっぽかすところだった。
唯一の悪い子
「すっかり忘れてた!今から病院へ行くよ!急いで!」
これまでならサトイモはなかなか急な予定変更に対応してくれなかった。
ところが、昨日は素直に出かける準備をしてくれた。
「もう、お母さんったら!」
と言いながらも。
おかげさまで予約には間に合ったし、行きの電車でも良い子だった。
「帰りに公園で遊んで、イケアでソフトクリームを食べてチョコレートを買おうね」
などと穏やかに楽しい話をしながら。
学校へも行けているし、これなら主治医に良い報告ができるな、と思っていた。
ところが。
いざ、診察室へ入ると、サトイモはスマホで将棋ゲームを始め、やめなさいといくら言ってもきかない。
「学校も行けてますし、宿題もやっているし、家でもルールを守ることができて、とっても良い子に過ごせてます。…今はこんな感じですが」
私が言っていることとサトイモの様子が違い過ぎて、まるでコントのようだった。
顔に泥を塗られる、というのはまさにこういう感じか、と思わされる。
病院を出てから、
「お母さんはめちゃくちゃ怒っています」
と伝えると、
「なんで怒ってるの?将棋をやめなかったことくらいしか思いつかないよ」
「それ!診察室に入るときにやめなアカンやろ!」
「すぐに終われると思ってたんだよ~。終わるまでって思ったら長くなっちゃった」
「今後二度と診察室でゲームしないって約束できる?」
「もうしません。ごめんなさい」
サトイモが意外と素直に謝ったので、私もそれ以上怒らないように怒りを収めた。
ポートアイランド南公園
兵庫県立こども病院の横には、大きな公園がある。
いつもは遊具がある児童公園で遊んで帰るだけだけれど、今回は時間があったので児童公園の反対側を散歩した。
大きな池があって、そこはカモやバン、サギといった野鳥の楽園だった。
ポートアイランド自体が人工島なのに、自然を感じさせてくれる素敵な公園があることに驚く。
サトイモはデジタル機器より、外遊びのほうが好き。公園でうれしそうに走り回る。
こっちが本来のこの子なんです、と精神科の主治医に見せたいくらいだ。
病院で診るから病気や障害に見えるのでは?とふと思う。
でも、病院に通わなかったら、ここの公園に来ることもなかっただろう。
禍福は糾える縄の如し。