奇才サトイモの元気が出る発達日記

発達障害(ADHD&ASD)の疑いがある息子サトイモの子育て日記です。

眠らない子ども

夏休み一週間前から、登校渋りが復活していた。

「あと〇日だから、頑張って学校行こう!」

ある日は手を引いて、ある日は自転車に乗せ、ある日は夫に車で送ってもらって、あの手この手でなんとか学校には行かせた。

けれど、担任の先生から何度か電話があり、登校渋りがひどい日は学校での態度も悪いようだった。

特に、音楽の時間に音楽会の練習を少しだけ始めたら、鍵盤ハーモニカを全く吹かなくなってしまったらしい。

「吹かなかっただけですか?」

変な音を出したりして邪魔をするならまだしも、吹かないでじっとしているくらい、いいじゃないかと思うけれど…。

 

夏休みがあけたら、音楽会の練習が始まる。

音楽会の練習といえば、幼稚園では大変苦労した。

そのことも伝えたうえで、

「別に音楽会に出なくてもいいし、音楽会の練習に参加しなくてもかまわないと思っているのですが、それは無理なんでしょうか」

と、私が担任に言うと、

「参加しないといっても、じゃあその時間はどこでどうやって過ごすのか、という話になりますから。例えば、来年から特別支援級にうつるという前提で、音楽会の練習のときだけ特別支援級で『お試し』という形で過ごしてもらうとか…」

と提案された。

またもや通常学級は難しいって話か…。

担任は、音楽会練習にイヤイヤ参加するより、その時間を特別支援級で過ごしたほうが本人を伸ばせるかもしれない、とポジティブに聞こえる発言もしたけれど、こちらとしては、どこか「厄介払い」しようとしている雰囲気を感じてしまった。

 

学期末にはサトイモが通信簿を持って帰ってきた。

一年生一学期は、「できる」「もう少し」の二段階評価で、コメントもない。

サトイモは全項目「できる」だった。

それだけ。

それを見た夫は、

「つまらん通信簿やなぁ。これだけ見たって何にもわからん。問題児の片鱗もない」

と残念がった。

 

僕は寝ないよ

夏休み前から、サトイモが夜寝つかなくなった。

登校渋りと関連していて、

「早く寝ないと起きられないから、学校行けないよ」

という親の理屈の逆手を取り、

「僕は寝ないし、朝起きないし、学校行きません」

というわけだ。

 

9時に寝るようにベッドに入れても、

「眠くない!僕は寝ないよ!」

とベッドから抜け出す。

私のほうが先に寝てしまって、気がついたらサトイモが暗い部屋で遊んでいる。

ブロックで創作したり、紙で工作したり、部屋の模様替えをしたり、将棋のコマを並べたり…。

親としては、なんとか寝かせようと部屋を真っ暗にして、オルゴールの音楽をかけたり、昔話や聖書を朗読したり、安眠のツボをマッサージしたり、果ては車に乗せてドライブしたり。

アレコレ頑張っても、日付を超えるまで寝られない日が続いた。

朝は学校や用事がある時間に間に合うよう起こすので、睡眠時間は足りていない。

それでも、日中あまり眠そうにしない。

夏休みに入ると睡眠障害は余計にエスカレート。

昼間はプールに公園にと目いっぱい遊んでも、全く眠くならないのである。

 

これには、親の私達が参ってしまった。

夫は、ワガママが過ぎる、と何度かサトイモに手をあげた。私も、ベッドを抜け出すサトイモと掴み合いになった。

でも、これはワガママなんだろうか、とだんだん疑問に思うようになった。

6歳の子どもが、昼間、1時間半プールで泳いでるのに、夜中の2時半まで眠くならないなんて、明らかに異常としか思えない。

発達障害がある子どもに睡眠障害があるのは、よく起こることらしい。

眠りを司るメラトニンという脳内物質の分泌が少ないのだそうだ。

小学校のスクールカウンセラーに相談すると、それをコントロールする「お陽さまの光を浴びるのと同じ効果」の薬があるらしい。

副作用もほとんどないそうだ。

これまで、発達障害に関する病院受診をしないできたが、これについては病院を頼らざるをえない。

 

そこで、近くて一番評判のいい児童精神科を受診しようと、予約の電話をかけた。

なんと来年の1月まで空きはないという。

えっ!!じゃあ今年いっぱい眠れないの?!

ほかの病院も調べてみたけれど、似たりよったり。知人に聞いたら児童精神科の空き待ちは半年から一年くらい当たり前らしい…。

 

案の定、サトイモは不摂生が祟って風邪をひいた。

昨日、かかりつけの小児科に風邪を診てもらう際、睡眠障害について相談してみた。

たまたま、病院内でも神経発達の専門外来も受け付けている先生に当たった。

発達障害についてこれまでの経緯を話すと、

「神経発達症の子にしか出せない薬なんですけど、メラトニンの薬があります。みたところ、お話をきいたところ、多動、ADHD自閉症スペクトラムでしょう。お母さん、一服盛りましょう!それで眠れると思いますよ」

と言ってくれた。

やった!!薬を出してくれる!!

「ありがとうございます!ありがとうございます!」

医者の処方でこんなにありがたいと思ったことはない。

 

昨夜、メラトベルを飲ませた。

「僕は寝ないよ!」

と、最初は抵抗していたものの、絵本の読み聞かせのためにベッドに入り、お話が終わったあと、音楽をかけながらマッサージをしていたら、すぐに眠った。

寝た!!眠ってくれた!!

私の喜びたるや。

しかも、朝早く目覚めて、初めてのラジオ体操に出かけて行った。

感涙。

 

いつから眠れないの?

小児科で、先生がこんな質問をした。

「多動が気になったのはいつから?なかなか眠らないのはいつから?」

それは私に対して、発達障害を疑うようになった時期について尋ねたかったんだと思う。

けれど、その質問に対して、サトイモがすかさず、

「寝られないのはじいじが死んだ日からだよ」

と答えたのには驚いた。

 

言われてみれば、父が他界した日から連日、落ち着いて寝られない日が続いた。

でもそれは、葬儀会館で泊まったりお通夜だったりという特別な状況だったからで、私はついついスルーしてしまっていた。

サトイモにとっては、それが睡眠障害のきっかけだったのだ。

睡眠障害を抱えてから、機嫌が悪く、多動でこだわりが強くなった気がする。

それが、祖父の死がきっかけだったなんて。

 

サトイモがお坊さんにこんな質問をしたことがある。

「じいじは今どこにいる?天国?」

浄土真宗ではな、天国と言わずにお浄土や。今はお浄土におるんやで」

「お浄土でじいじは元気にしてる?」

「元気やで。お浄土では痛いことも苦しいこともないからな」

「じゃあ、お浄土でまた死ぬことある?」

「また死ぬ?お浄土に行ったら、ずっとそこにおるんや」

「じゃあ、じいじはもう死なないの?」

「?」

死後の世界で死ぬのか死なないのか、というサトイモの質問が私達大人には理解不能で、何かボタンをかけ違えたようなやり取りが続いた。

 

死についてしつこく聞くということは、サトイモはやはり父の死を相当引きずっているのだろう。

「じいじが死んだら、じいじのスマホ僕にちょーだい!」

と嬉々として言っていたくせに。意外とナイーブなやつめ。

どうか今夜も、すんなり寝てくれますように!