いつの頃から始まったか忘れたけれど、サトイモは百円ショップが大好きだ。
おもちゃ屋やゲーセンには行きたがらないけれど、とにかくダイソーには行きたがる。
今年1月から毎週神戸大学の心理教育相談室へプレイセラピーを受けに行っているが、最寄りの阪急六甲駅の構内にミーツという百円ショップがあって、帰りには必ずそこで買い物をする。
買い物はほとんどが小物ケースや引き出し。ビニール袋、S字フック、DIY材料、文房具や工具類。たまにお菓子。
毎週なので、ミーツには目ぼしいものがなくなった。
すると、ほかの百円ショップに行きたがるようになった。
電車や車の車窓からダイソーの看板が見えると、
「あそこにダイソーがある!ねえ、あそこに行こう!」
と言い出す。やっぱり百均の中でもダイソー推しなのだ。
「また今度、お父さんが休みの日に連れて行ってもらおうね」
私は適当に返事をしていた。
仇になった週末
私のその生返事が、この週末の仇になった。
「ねぇねぇお母さん。お父さんが『電車で行ける場所にはお母さんと行きなさい』って。お父さんは電車で行かないんだって。だから一緒に電車でダイソーに行こう」
サトイモがわざわざ私に言ってきた。
夫としては、週末は車で行ける場所に出かけたいらしい。
「車で行けるダイソーに連れてってもらえばいいじゃない」
「いやだよ、ボクはあの電車から見えるダイソーに行きたいんだよ」
土曜日はグズグズとそんなことを言って、結局家から一歩も出ないまま過ごした。
日曜日、夫が須磨パティオまでお出かけをしようか、と提案した。
私は賛成したけれど、サトイモはしぶった。
「ダイソーじゃないと出かけない」
「須磨パティオにも百円ショップはあるみたいよ」
夫がサトイモのご機嫌をとって、なんとか連れ出すのに成功した。
ダイソー推し
須磨パティオにあるのは、セリアだった。
サトイモはお気に召さなかったようで、
「家に帰る!こんなところ来たくなかった!」
とゴネ出した。
癇癪をおこしたり暴れたりはしなかったものの、ずっと「早く帰ろうよ~!」とぐずっている。
セリアとダイソーの何が違うねん!ていうか、セリアのほうがええやんか!と思う私はため息しか出ない。
もっとゆっくり買い物をしたり、食料品の買い出しをしたりして帰る予定だったが、あまりグズグズしているとサトイモの不満が爆発するかもしれないので、すぐに帰ることになった。
何しに須磨まで来たのやら…。
今回は、「必ずしなければならない用事」がなかったため、私も夫も穏やかにサトイモのワガママを受け入れた。
でも、もし目的のあるお出かけで、すぐに帰れなかったら?
私か夫のどちらかがブチ切れただろうなぁ…。
無意味な散歩
全く強情である。
夫は腰痛が出ていて「もう出かけへんよ」というし、サトイモはずっと「ダイソー!」と叫んでいるし、仕方なくサトイモを連れて私一人、散歩に出た。
なぜダイソーなのか。
買いたい物や必要な物があるわけじゃないのに。
全く不毛である。
「出かけるんや?」
と驚く夫に、
「ヘンゼルとグレーテルみたいに、三宮まで連れて行って捨てて来ようと思う。サトイモ、今のうち小石かパンくずでも用意しときよ」
と答える私。サトイモは意に介していない。
ひとまず元町商店街にあるミーツに行ったが、サトイモはダイソーでないと気がおさまらない。
私は「ええかげんにせぇ」という気持ちになっているので、無表情で無言のままサトイモについていく。
元町商店街のダイソーには何度も行っているはずなのに、サトイモは全く道を覚えていない。
あらぬところで引き返し、南に下り、西へ行き、と迷走した。
サトイモが問いかけてくるけれど、私は能面のような表情でガン無視。
結局30分以上歩いて、サトイモもあきらめたようで、近所のファミリーマートでポッキーを買って帰って来た。
その夜、寝る前に、
「じゃあ今日はヘンゼルとグレーテルを読みます」
と私が言うと、
「それは嫌!絶対やめて!」
とサトイモが本を取り上げて嫌がった。
グリム兄弟は偉大なり!
ダイソーに行くまで学校へは行かない
その翌朝もまた「ダイソーに行く!」が続いていた。
「ダイソーじゃなかったら家から出ない! だから学校へも行かない!」
と言い出したので、
と私が取引をした。
サトイモは最初全く取引に応じず、
「学校は行かない!ダイソーに行く!」
という一番ダメな主張を繰り返していた。
「学校に行かないならダイソーにも行きません」
私が粘り強く交渉した結果、ダイソーへ行って学校にも行くことになった。
わざわざ電車に乗って三宮まで出て、ダイエーの上にあるダイソーへ。
店内をウロウロして、買ったのはチュッパチャップス3本のみ。
そんなの近所のスーパーで買えるやん!
これがASDのこだわり?
念願のダイソーに行って一日経って、もうダイソーと口にすることはなくなった。
土曜日にダイソーへ行っておけばよかった、と私が後悔するばかりだ。
これがASDのこだわりなんだろうか?
ASDのこだわりというと、「毎日〇〇をやる」「食べ物のブランドは××じゃないと食べない」「同じ道を通りたがる」というようなルーティンをよく耳にする。
サトイモはそういうのが全くない。
ただただ、一度これがしたい!と言い出すと、やらなければ気が済まない。
逆に言えば、やれば気が済む。
相変わらず卵料理を作るブームもある。
先週から、卵とバナナ炒めを作ると言い出した。
やめたほうがいいとアドバイスしても、どうしてもやるというので、土曜日、私が折れて作らることにした。

恐ろしいことに、上にはマシュマロともっちゃん団子、チョコレートをトッピング。
バナナ炒めにシロップを入れ過ぎたせいで、甘すぎる仕上がりになってしまった。
夫はスプーン半口しか食べなかった。
本人も「こんなはずじゃなかった」という後悔があったようで、二度とバナナ炒めを作るとは言わなくなった。
経験からしか学べないのはわかるけれど、せめて何かのレシピを参照してみたらどうだろうか。
本やテレビ、ネット情報、他人の意見に耳を貸すようになるのはいつのことやら。