自主休校、一人学級閉鎖、フライング冬休み、ハッピーマンデーならぬハッピーエブリデー、プレミアムフライデーならぬプレミアムエブリデー。
学校に行かないでよいなら、サトイモは絶好調。

毎日元気に、意欲的に制作活動にいそしんでいる。
目をギュッギュッとやる石原慎太郎チックもなくなった。
でも、
「お母さん一緒にあそぼ」
はますますひどくなっている。
家事をするのも出かけるのも付きまとわれる。
私は自分の時間が持てなくなってイライラ。
はあ〜、これ毎回書いてる気がするなぁ⋯。
私の煩悩との戦い
今年の夏に発刊された本田秀夫先生の『不登校大全』。
ちょうどその頃は登校できてたから、買うかどうか迷いつつ、本田先生信者なので一応買っとくか〜、と購入した一冊。
今月から再び不登校になって、買っといてよかったとつくづく思う。
本田先生によれば、不登校の子どもに、
「学校行かないなら家で勉強しなさい!」
というのはNG行動らしい。
「親は勉強させたいという煩悩を抑えるべき」
というのは、まさしく名言。
食欲、物欲、性欲、出世欲、睡眠欲など世の中に煩悩はいろいろあるけれど、人間にはもう一つ、
「他人に教えたい欲」
というのが存在する。
私が愛聴しているラジオ番組『東京ポッド許可局』には、「尻石鹸」という投稿コーナーがあって、それは「他人に物を教えたい欲を解消するための」コーナーとして出来た(最近はあんまり出てこないけど)。
自分が知っていることを人に教えたい!(役立つ情報かどうかとか相手が知りたいかどうかは関係ない!)という煩悩が人間には確かに存在する。
私は、教えたい欲がめちゃくちゃ強い。
「一緒に遊ぼ」というサトイモに、
「だったら勉強しよう」
とついつい言ってしまう。
そしてサトイモが漢字が書けないと、
「そこ違う!もう一回!」
と千本ノックの鬼コーチ化してしまう。
この欲望をなんとかせねば。

墨ではなく水でできる書道をやらせたり、お風呂の壁に書けるクレヨンでやらせたりと、なんとかやる気になるよう工夫をこらしてみる。
紙と鉛筆以外だと、サトイモも漢字練習を嫌がらない。
少しでも漢字を教えたい!
⋯って、私の欲望丸出し。
ストロー事件
二学期の振り返りとして、先日担任の先生との個別懇談があった。
サトイモが学校に行けなくなったきっかけを、双方から情報を出し合って検討する会となった。
サトイモは私に、
「学校に行くと必ずクラスメイトとケンカしてしまうから」
と理由を語っていた。
それを担任の先生に伝えると、先生はそういえば、とこんな話を教えてくれた。
給食当番の子とサトイモがモメたケース。
給食の牛乳はストローで飲むので、ストローを配付する当番がある。
ところがサトイモは、
「牛乳をストローなしで飲みたいからストローはいらないよ」
と拒否した。
当番の子は、責任感から必ずストローを配りたい。配らせてほしい。
とりあえずもらっておいて、使わずに後で返せばいいじゃない、と押し付ける。
サトイモは、頑として受け取らない。
ボクはストローで飲みたくないんだよ!だったら牛乳もいらないよ!
揉めていると、ほかの子が当番の援軍に来る。
牛乳アレルギーの子がいるから、パックを開けずにストローで飲むべきだ!それが学校のルールだ!
だんだんサトイモが悪者になる。
さらに頑なになるサトイモ。
揉めているうちに、サトイモがお箸を武器みたいに握って振り被るポーズをとったらしい。
わー!サトイモくんが攻撃しようとしてる!!こわー!!
クラス中の非難の的となる⋯。
なるほど、サトイモはそうやって孤立してしまうんだなぁ…。
容易に想像できた。
もしかしたら、私がプラスチックゴミ問題の話をしたりするから、ストローを使わないほうが環境によいと考えたのかもしれない。
スタバやマクドナルドのストロー問題についても家庭でよく話すし。
変なトコでSDGsとか意識高いからなぁ⋯。
工作ではストローをバンバン使うくせになぁ⋯。
とにかく、盲目的に「学校のルールに従え!」というのがサトイモには受け入れがたいだろうと思う。
クラスメイトのほうが正義だから、サトイモは分が悪い。
柔軟な対応
担任の先生はこれまでも大変柔軟な対応をしてくださって感謝しかない。
懇談では、配慮の数々に頭が下がる思いだった。
授業中うろうろしないように、サトイモには好きな学習プリントを自分で選んで、それを黙々と一人こなさせる、という対応をとってくれていた。
「これがその学習プリントのファイルです」
と先生は分厚くなったフラットファイルを渡してくれた。
サトイモからも、ときどきその話は聞いていた。
不登校が始まったとき、私が、
「どーせ学校行っても勉強してへんやろうから、行っても行かんでも同じや」
と言ったら、
「勉強しとったで。お母さんは知らんくせに!」
とサトイモが怒ったことを思い出した。
そうか、それなりに勉強してたんや。
パラパラとめくる。
え?分数ってもうやってましたっけ?あれ?割り算?
「学年とか関係なく、サトイモくんがやりたいって言うのをやらせてたんです。ちょっとだけやり方を教えたら、すぐ理解して。割り算の余りも出せるようになりました」

「それから、ここ見てください。普通は筆算で計算するんですけど、これができるんですよ!」

先生が示してくれたのは、「32×25」。
「32を8×4に分解して、4×25を100にして計算してるんです。これがわかるっていうのはすごいですよ」
「なんでわかるんでしょうか?」
「なんでか、できるんでしょうね」
「へぇ~!」
我が子ながらびっくりしてしまった。
サトイモは宿題もやらないし、テストも持って帰ってこないし、どれくらいできるのかが私には見えない。
先生に教えてもらうまで知らなかった。
今、2年生のみんなは算数で一生懸命、九九の暗唱をやっている。
サトイモは私がいくら暗唱をするようにうながしても、絶対に唱えようとしない。
お風呂に九九表を張り出し、寝る前に私が九九を聞かせ、私が九九を言えるようにと促しても、サトイモはなかなか応えない。
でも、私のそんな努力は空回りだったようだ。
そういえば、先日読み終えた今井むつみ著『学力喪失』の中に出てきた問題を、サトイモに出してみたことがあった。
「サトイモ、これわかる? 二分の一と0.7、どっちが大きい?」
サトイモはしばらく考えてから、
「0.7」
「適当に言ったでしょ」
「二分の一って0.5でしょ? だから0.7のが大きい」
「わかってるなら、まあいいよ…」
私はすごすごとひっこんだ。
我が子ながら、7歳でこれが分かってるってすごくないか。
むむむ、つまり、「学校行かないなら、家で勉強しなさい!」って言わなくてもいいってこと?
いやいや、逆に、どうやったら、
「勉強するって楽しい!わかるって面白い!」
ってサトイモに感じてもらえるのか。
こんなに算数ができても、サトイモは、
「学校も勉強も嫌だから、高校にも大学にもいかないよ」
と言う。中卒で働くらしい。
「来年のことを言えば鬼が笑う」と言うから、そんな先のことはわからない。
でも、笑けるくらいに来年ももうすぐ。