不登校の子どもというと、家で1日中ゲームをしたりYouTube動画を見たりしているイメージがあった。今もある。
けれど、うちのサトイモは、「一緒に遊ぼうよ」と私に付きまとい、デジタル機器に向かう時間がどんどん減っている。
金曜日は朝からメリケンパークまで散歩。
気持ちいいけど、毎日公園行かされるのは疲れる。
鬼ごっこしようとか、まじでかんべんして〜!
私が限界を感じ、
「好きなだけYouTube見ていいから頼むから離れてくれ!」
と頼んでも、
「見ない!一緒に遊ぼ!」
としつこい。
役立つ人間
うまくいけば、洗濯物干しや食器洗いを手伝ってくれる。
家事を手伝えば私の手が早く空くからだ。
サトイモが一番興に乗ったのは窓のサッシ掃除で、掃除させる場所がないから私が思いつきで頼んだのだが、思いのほか夢中で取り組んでくれて大成功だった。
ウェットシートが真っ黒になるからやりがいがあったようだ。
「ママ、もっとボクを頼ってよ。ボクは役に立つよ。何でもするから、もっと言ってくれたらいいんだよ。ママをラクにしてあげられるんだから」
ビッグマウスは一人前。
しかし、その翌日もお手伝いを頼んだが、
「昨日やったのに、なんで今日もならなきゃいけないの!」
と、充電コードで遊ぶのに夢中で全くやってくれなかったが。
気分屋ぶりにあきれる。
買い物ごっこ
一緒に遊ぼう、といって何をするの?というと、今は主に買い物ごっこブームである。
オモチャのお金を使い、家の日用品や文房具等を売り買いする。
オモチャのお金はだんだん減ってきて、新しいものを買いたいけれど!折しも新札への切り換え時期。
以前に買った100均の店頭に見つからず、今は自前で製造させられている。
嫌だといっても無理矢理やらされる偽札づくりの奴隷労働。
二万円札、そして二億円札という存在しないお札も製造。
そして起こされるインフレ。
「えんぴつ一本千円です〜」
「高い!でもお金持ってるから買います!」
「ありがとうございます。買ってくれたお礼に、一万円差し上げま〜す」
「え〜っ!いいんですか?」
「いいんですよ、ボクお金持ちなんで〜」
「だったらお店で働かなくてもいいんじゃないですか」
「好きでやってるんですよ〜」
こんなやり取りに飽き飽きしていた頃、物語が動き出した。
私の息子はくんくん
サトイモのぬいぐるみの友達の中でも、一番大好きなのは子犬のくんくん(画像中央)だ。
くんくんは設定上、私の息子ということになっている。
私がお店屋さんポジションを演じたターンのときサトイモが、
「ところでお子さんはいるんですか?」
と尋ねてきた。
「くんくんっていう息子がいます」
「今日は連れてきていますか」
「お店なんで、ほんとは子どもを連れてきたらダメなんですけど、一緒に来ちゃったんです」
「別にいいじゃないですか」
「ダメですよ。子どもは大声出したり走り回ったりするので、お店の迷惑です」
「たしかにね。でもくんくんはそんなことしないんじゃないですか?」
「ほんとは小学校なんですけど、学校に行かないのでついてきてしまったんです」
「くんくんは学校に行ってないんですか」
説得、そして学校へ
するとサトイモは、くんくんに学校へ行くように説教を始めた。
「くんくん、嫌だからって学校へ行かないと、大人になって困ることになるんだよ!」
ええーっ!
私は内心驚きながら、くんくんを演じる。
「でも嫌なものは嫌なんだもん」
「学校に行ったらお友達と遊べるよ」
「いいんだよ、お友達はもうできたもん。もうお友達50人はいるもん」
サトイモがよく言うセリフを私がくんくんに言わせる。
すると驚きの返し。
「お友達ができたってねぇ、学校に行かなかったらだんだん忘れられて、大人になった頃には一人ぼっちで過ごすことになってもいいの?」
「それは、悲しいなぁ」
「そうでしょう。ボクなんかね、毎年百人友達が増えているよ。千人、万人も友達がいるよ」
「いいなぁ。ボクも学校へ行こうかなぁ。でも、お勉強が苦手なんだよ。わからないんだもん」
「だったらボクが教えてあげます。一緒に学校へ行こう!」
…一体何を考えてこんなことが言えるのか、不思議でしょうがない。
驚きの結末
その後、ぬいぐるみたち総動員で学校ごっこが始まった。
もちろん先生はサトイモ。
時間割はこくご、さんすう。漢字を書かせたり、足し算をさせたり。
優先的にくんくんを指し、目に余るほどのえこひいきで特大花丸をつける。
「くんくんったら、苦手っていってたけど、ちゃんとできるじゃない!もう大丈夫だね!」
「ありがとう!学校楽しいよ!」
給食の時間もくんくんだけは特別扱い。
先生の横で本物のお菓子を食べさせてもらえる。
「給食もおいしいでしょう。学校好きになった?」
「うん、これからは学校来れそうだよ」
「実は、顔にシールを貼っていたからわからなかったと思うけど、ボクは先生だけど、実は…、くんくんのお父さんです!!!!」
えーーっ!!そんな隠し設定が?!?!
「ぱぁぱぁーーっ!!」
「くんくーん!!」
「パパパパパパぁ〜!!」
「くんくん、今まで黙っててごめんねぇ〜」
サトイモがくんくんをぎゅーっと抱きしめて、感動のフィナーレ。
本人は学校へ行けるのか?
木曜日、放課後に担任の先生と面談をするため、サトイモと私は久々に小学校へ行った。
3時という時間設定が悪くて、ちょうど下校途中のお友達に何人も出会ってしまった。
友達に見つかると、サトイモは走って逃げる。
顔を合わせるのがだんだん気まずくなってきたようだ。
昨日の町内会のハロウィン祭りもキャンセル。突然行かないと言い出した。
知り合いから「学校はどう?」と尋ねられるのが嫌なのだろう。
「自分で学校に行かないって決めたんやから、堂々としとけばええやないの」
と私が叱咤する。
しかし、そんなこと言われたところで、気まずさや気後れが払拭できるはずはないのは私もわかる。
これ以上休むと、さらに行きにくくなるんじゃないだろうか。
勉強もしてないし、今度は「行きたくても行けない」状況に突入しそう。
また不安になってきた。