日曜の夜、サトイモが食事中に癇癪を起こした。
「サシミを食べさせて!」
食卓にのぼっているのは、巻き寿司と唐揚げとカツオのタタキ。
きっとカツオのタタキのことを言っているのだろう、と小皿に取ってやっても、
「サシミ!サシミ!」
と言ってテーブルによじ登ろうとする。
テーブルには乗らないで!と止めながら、
「今日はサシミはないけど?」
「何のことを言ってるの?」
と私も夫も困惑。
「なんでサシミを食べさせてくれないの!!」
「だから、カツオのタタキじゃないの?」
私がカツオが乗った小皿を差し出すと、サトイモはそれを奪い取って投げてきた。
「それ以上やったら怒るぞ!」
夫が手を振り上げ、サトイモを叩くポーズを取った。
また一触即発。
「お願い!我慢して!私も我慢するから!」
私が夫に強く言う。
サトイモはテーブルに半分乗って、一番奥に置いていた醤油を取ろうとした。
「これだよ!!」
私と夫は唖然。
「それ、醤油やけど?何言うてんの?サシミちゃうで?」
私の言い方があまりにバカにしたようだったからか、サトイモは醤油のボトルをまた投げた。
「こら!投げるな!」
夫は注意はしたものの、今度はカッとなるこのなく、
「サトイモは醤油がほしかったんか。でも、カツオのタタキにはもうポン酢がかかっとうから、醤油はいらんのやで」
と冷静に伝えてくれた。
「違う!それじゃない、これ!」
サトイモはカツオを退けて巻き寿司を手に取り、醤油をかけたいというジェスチャーをした。
「巻き寿司に醤油をかけたかったのか…」
ようやくコミュニケーションが取れて、食卓が正常化した。
間違いか、意地張りか
最近のサトイモは薬のおかげか、規則正しく寝起きしていて、だいたい22時前には就寝してくれる。
おかげで、夫婦で1日の振り返りができる。
私が、最近サトイモの言い間違いや覚え違い、勘違い、言葉の失念が多いことを夫にこぼした。
食事の前も、小学校で育てたアサガオの話をしたら、サトイモが、
「アサガオなんて育てたことないよ!」
と言うので揉めたのだ。
「小学校で一学期にやったこと忘れちゃったの?じゃあベランダにある鉢は一体何なのよ?」
と私がわざわざベランダに出て説明すると、
「ああ、アサガオね。ママがヒマワリって言ったからだよ」
とサトイモが言う。
「ヒマワリなんて言ってないよ」
「いや、言ったよ」
と言った言わないの水掛け論になった。
「まあええわ、ママが言ったことにしとこか」
と私が折れたけれど、そのあとに醤油サシミ事件である。
「醤油をサシミだなんて、誰がわかる?」
と私が憤慨していると、
「いや、あれ、実は途中からわかっとったんちゃうか。自分が言い間違えたことに気がついたけど、引き返せんようになって意地張ったんちゃうやろか」
と夫は言った。
そうかなぁ?
ただ思い当たる節と言えば、
「ボクが学校の勉強の嫌いなのはね、間違ったらバツをつけられるとこ」
とサトイモが言ったことだ。
自宅では、私はなるべくバツをつけないようにし、間違った問題番号に印をつけるようにしていた。
バツをつけられるのが嫌、か。
プライドが高いんだなぁ…。
でも、間違いを認めて、同じ誤りを繰り返さないようにしなければ、成長はないんだけど…。
それ以前に、間違えたくないから何もやらない、というマインドを変えてもらわないと。
「全部正解する人より、間違うのが怖くても勇気を出してチャレンジする人のほうがカッコいいんだよ」
一応私の考えは伝えたけど、サトイモがどう受け止めたかはわからない。
マンドとタクト
認知行動療法の本には、マンドとタクトという単語が出てくる。
マンドは「〇〇してほしい」など、自分の要求を他人に伝える言葉。
タクトは状況を表して他人に報告する言葉。
最初にこれらの言葉を知ったのは、児童発達支援教室での説明だった。
この2つを上手く表現できるようになれば、癇癪などの状況が改善される、ということだった。
サトイモは日頃から要求だらけ。
だからマンドは十分よくわかっている子供だと思っていた。
でも、本当にそうだったんだろうか。
言葉の基盤がふにゃふにゃなのでは?
またもや暴力
昨日、サトイモと二人で家にいて、1日中遊びに付き合わされて気が狂いそうだった。
最初に、サトイモがやりたいこと、私がやってほしいことの順で回すことを決め、サトイモは①お買い物ごっこ25分、②人形遊び25分、とホワイトボードに書き込んだ。私はプリント学習。
私はスマートウォッチのタイマーをセットするとき、ズボラをかまして25分とせずに30分にしていた。短かったら騙しだけど、長い分には問題なかろう。
タイマーが鳴ったとき、
「もうお買い物ごっこは終わりだよ。次はプリント学習ね」
と言うと、サトイモは次も人形遊びだとゴネ始めた。
「やりたいことは交代だって言ったじゃない」
「でもまだ足りないんだよ!お買い物したあと、みんな(ぬいぐるみ)がキャンプに行かないといけないんだ!」
「足りないって何よ。25分じゃなくて30分やったんやで。足りないどころか、5分延長してやってるのに!」
と私が告げると、サトイモはそれに怒り出した。
「25分だって言ったのに、なんでママは勝手なことをするんだよ!もうめちゃくちゃじゃないか!!」
泣きながらなぐりかかってきて、物を投げようとするので取っ組み合いになった。
また暴れるのか…。
情けなくて泣けてきた。
どう収拾をつけたか仔細には覚えていないけど、今回は比較的短時間で収まった。薬のおかげかもしれない。
「叩いたり物を投げたりはしないで。気に入らないことがあれば、言葉で言ってね」
私が静かな口調で何度も繰り返したからかもしれない。
サトイモは、
「ごめんなさい。これからは言葉で言うようにするよ」
ときちんと謝れた。
サトイモが謝った!!
自分が暴力をふるったことも、きちんと認識できていた。
これはすごい進歩!!
秋の花火
今日は、久々にサトイモと私が小学校へ行った。
といっても、2週間に一度、放課後に担任の先生と軽い面談をしている。
今日も「行きたくないなぁ」と言っていたものの、気が進まないながらも、無事校門をくぐって、一人で教室にも行けた。
そのご褒美ではないけれど、夜は夫も交えて三人で、メリケンパークで行われた「みなとHANABI」を見に行った。
サトイモはものすごく楽しみにしていて、「じいじのスマホ」で画像を撮りまくっていた。
パパの言うこともちゃんと聞けた。
ワガママを言うこともなかった。
終了後、中華料理。
外食に私は少し不安があったけれど、何もトラブルなく帰宅。
少しずつ少しずつ正常化してきてる。…と、思いたい。