顔面にトミカをぶつけられてケガをする、という惨事があったにもかかわらず、今日夫はサトイモと二人でお買い物に出かけてくれた。
もうサトイモと外出してくれないんじゃないかと思っていたので、夫には感謝である。
「謝るまで許さん」
と怒っていた夫だったけれど、
「自分がした記憶がないのに、謝れるわけないでしょう」
と私が刑法39条心神喪失を適用しますと申し立てる(昔、森田芳光監督『39 刑法三十九条』っていう映画があった)。
夫も譲歩と妥協を山のように重ねて耐えてくれている。
忍耐あるのみ。
抗精神病薬の副作用
木曜日初めてサトイモに抗精神病薬を飲ませたが、夜中だけでなく起きてからも調子が悪いと訴えていた。
はっきり言わないが、手足が動きにくいようなことをボソッと言った。
薬局からもらった説明の紙には「筋肉のこわばり」「手足の震え」が副作用に挙げられている。ネットでも「手足に力が入りにくい」と書いてあるサイトもあった。
気になって薬局に電話をかけた。
「副作用の可能性もないとは言えませんので、一度病院にお尋ねください」
と言われ、病院に電話をかけたら、医師は休みで看護師では答えられないため、
「気になるなら、今日の服薬はスキップして明日受診に来てください」
という。
すぐ知りたいのになぁ…。
脳内で診察室をシミュレーション。
きっと医師だって、
「副作用の可能性もないとは言えませんので、お母さんどうしますか?」
と言うだろう。
薬を飲ませずに暴れられてこちらがケガをするリスクをとるか、本人が体調が悪いと言っても我々の安全をとるか。
夫に相談すると、
「たった一回飲んだだけで、ほんまに副作用かわからんやろ。今日も飲ませてみて同じように調子が悪かったらやめたら」
と言う。
調子が悪くなる可能性があるものを、平然と飲ませてみたらと言うのに驚いた。
飲ませるか、飲ませないか。
どうせ、最終的に決断するのはいつも私。
どうしよう…。
結果的に、サトイモは放課後等デイサービスから帰って来て夕食を食べると、眠いと言ってすぐ眠ってしまい、服薬なし。
いろいろ悩んだのが杞憂に終わり、結果オーライ。
夜中のさんすう
昨夜サトイモは23時くらいに起きてきた。
それから午前3時半まで私はサトイモに付き合わさせられる。
先日、
「おこづかいちょうをちゃんと書くならお小遣いをあげてもいいよ」
と私が言ったのを、サトイモは喜んで、一日50円というベーシックインカムを要求してきた。
一カ月続いたら千五百円にもなる。6歳児には多すぎる!
これまでの私なら拒絶していたけれど、とりあえず条件を飲んだ。
どうせお小遣い帳なんて三日坊主でやめるに決まっていると踏んだからだ。
ここ2日ほどは続いていて、この夜は3日目。
ベーシックインカムに加えて、かつて実施していた学習プリント1枚1円の加算も要求。
そして、昨夜、夜中にプリントを10枚やった。10円加算して、60円をお小遣い帳に記入。
お金で釣って勉強させるなんて間違っている。それは知っているし、よくないなぁ、と迷う。
でも、長い間学習にそっぽを向いて、鉛筆すら持たなかったサトイモが机に向かう姿がうれしかった。
たとえ午前2時の活動でも。
奴隷にはなりたくないけれど
最もなりたくないもの。
それは、子どもの命令に唯々諾々と従う奴隷のような親だ。
昔から、そんな親にだけはなりたくない、だから人の親にはなりたくない、とずっと思っていた。
親の命令にも従いたくなかったのに、子どもの命令になんて従うもんか!
それでも、サトイモがビョーキになって、自分がなりたくなかった「子どもの命令に従う親」にならざるをえない状況になってしまった。
けれど、今の私は明鏡止水。
ひとまず受け入れる。
昨日、サトイモが、「ママ手伝って」とお道具箱と折り紙を渡してきた。
「じゃ、この道具を使って、ママはハタを作ってください。色鉛筆使ってもいいし、折り紙でもいいです。じゃ、やって」
イキナリである。
「ちょ、ちょっと待って。ハタって、旗? 国旗とかそういう旗?」
「そう。じゃ、やって」
「いやいや、いきなり言われてもわからんわ。お見本とかちょうだいよ」
「しょうがないなぁ。じゃお見本作るか」
そしてサトイモが渡してきたのがこれ。
「あのぅ、これ何すか?」
「だから、旗!!」
「もしかして、この細長いのは棒?」
「そうだよ。三角でもいいし、丸でも四角でも星型でもいいよ」
と、言われましても…。
「そこの糸にかけるんだよ」
私の裁縫道具から出してきて、カーテンレールからベッドルームに張り巡らせた絹糸を、サトイモは指さした。
将軍様の無理難題には、いつも困らされるでござる…。
私はあぐらを組んで、両手の人差し指で頭をクルクルやって坐禅を行った。
ぽくぽくぽく、ぽくぽくぽく、ち~ん!!
将軍様のとんちに答えるべく、折り紙を切って旗を製作。
「将軍様、こんなかんじでいかがでしょうか?」
私が切った折り紙を糸に掛けると、
「ママってすごい!ボクが思ってたとおりのものを作ってくれたよ!」
私の裁縫道具の糸をサトイモがイタズラしてたのは、こういう意図があったのか、とわかった。
また、折り紙を切って直角三角形を四つ作る過程で、適当に切ってしまったせいで、同じ形ではなく左右対称の形が混じってしまったことにも気づいた。これはまさに算数の図形!
私がちょっと賢くなった気がする。
そう言えば、先月こんなことがあった。
辞めたロボット教室の最後の課題を家でやっていたとき、気づけばサトイモは別のことをしていて、せっせと作っているのは夫一人だった。
「サトイモが作らないと、何の意味もないじゃないの」
と私がサトイモに注意すると、
「意味ないことないよ。パパの頭が良くなるやないか」
と反論されて、思わず吹き出してしまった。
今日の服薬は?
結局今日病院には行かず、医者に副作用について確認せず。
落ち着いているなら服薬しなくてもいいかな、と思っていたけれど、ちょくちょく夫とサトイモが衝突している。
一番一触即発だったのは、サトイモが夫の手押し台車を遊びで使ったときだ。
「そんなもん勝手に出してきて、家の中で使わんとってくれ。おまえのオモチャと違うやろ」
夫が怒るのも無理はない。
でも、サトイモとしてはお人形の旅行ごっこで運搬台車が必要なため、絶対譲らない。
二人が別の部屋に分かれて顔を合わせないことで収めたけれど、私の心境としては、
「今日は服薬させるしかないか…」
というところ。
服薬で「おまえのものは俺のもの」というジャイアン気質が治るかどうかはわからない。