昨日に引き続き、今日もサトイモは放課後等デイサービスに行ってくれた。
午後の自由な時間、サイコー。(←永ちゃん風に)
ただ、毎度毎度、放デイに持っていく荷物がすごくて、今日は布団カバーとプラスチックパネルと踏み台を持って行った。
家ではそのセットでテントごっこをして遊んでいたが、そっくりそのまま放デイに持っていくという。
「やめてよ…。持っていかんとって!」
私は抵抗を示したけれど、あんまり強く言うとまたバトルになるので折れた。
布団カバーだって現役で使っていたやつで、布団からはがされて勝手に使われている。
「お代官さまぁ~、許してけろ~!」とすがりつきたい気分。
しかし、観念する。
諦観。
好きにしてくれ。
生んだ私が悪かった。私の生活をどんどん滅茶苦茶にすればいいさ。
その一方、
「放デイのお友達と、これでテントごっこするんだ~」
と楽しそうに言うサトイモの様子は、少し前の鬱屈した状態を抜けた感がある。
放デイに来ているお友達の一人が隣の小学校だという情報を聞いて、
「その小学校だったら、幼稚園のとき友達だったミーちゃんと一緒だね。知ってるかなぁ?」
と私が尋ねると、
「さあ。だってあの子も学校行ってないみたいだから」
と言う。
「そうなんや。じゃあお仲間やん。いいやん、お仲間がおって」
と私が言うと、
「あんまり学校行ってないとか言わないほうがいいよ」
と言った。サトイモが怒るでもなく、普通の調子で、
「学校行ってないって、人に知られたくないもんだよ」
と言うのには驚いた。
「そうなの? 学校行ってない子もだんだん増えてきたし、気にすることないけどな」
私はフォローのつもりで言ったけど、それについてサトイモの反論はなかった。
エクソシストかビリーミリガンか
昨夜、夫とサトイモの間で一触即発の事態があった。
サトイモがキャンプごっこをしてダイニングの床に敷いている布団カバーを、夫が邪魔だからと片づけたからだ。
サトイモが金属製のS字フックを投げ、夫が「次に投げたら怒るぞ」とまともに相手をしてしまった。
どんどん物を投げるサトイモを夫婦で取り押さえるところまでいってしまったが、とりあえず布団カバーを元に戻すということで事態は早めに終息した。
気になったのは、取り押さえたときのサトイモとのやりとりだ。
「また妖怪ランボールが出た?」
「違うよ!」
「あなたはサトイモ君ですか?」
「違うよ!」
「あれ、波野サトイモ君じゃないんですか?」
「違うよ。ボクは波野サトイモ君じゃないよ」
「じゃあ誰なの!?」
「誰でもないんだよ!」
引きつった笑顔で答えるサトイモに、一瞬、本当の悪魔付きかと思った。
もしくは多重人格とか。
心理学とオカルトのあいだ
サトイモの対応を模索するために図書館でいろいろ本をあさる。
これまでは教育関連や障害関連の書籍を中心に見ていたが、精神医学や心理学分野の本も参考にしようかとそれらの棚を見にいった。
すると、心理学の左隣は哲学、倫理学、宗教学と続き、しかし反対側の右隣には超心理学、そしてオカルトが連なっていた。
ああ、右隣はサブカルだ~。
90年代サブカルを生きてきた者として、確かに精神医学・心理学とオカルトが地続きなのはよくわかる。
昔は私もそういうのにワクワクしたものだ。
そして、今こうやって子育てに行き詰っていると、藁にもすがりたい気持ちで変なものに手を出してしまいそうな気持ちになる。
エクソシストにお祓いしてもらって、サトイモに憑依した悪霊を取り除きたい。
前世の祟りなら、聖なる壺とか数珠とかペンダントでなんとかしたい。
実際、うちの母が難病が判明したばかりのとき、お向かいのおばさんが「拝んでもらいにいこう」と誘ってきた。霊波之光だった。
オカルトと宗教は弱い心につけこむ。
つけこまれないように、図書館では認知行動療法の本だけを借りてきた。
ちびっこ雑学王
図書館では、サトイモに読み聞かせる本も借りる。
ついつい、親の「勉強させたい欲」が炸裂して、知識系のものを選んでしまう。
昨日、そのうちの一冊『なぜ?どうして?せかいはふしぎ』という本を読み聞かせていたら、サトイモがこんなことを言い出した。
「ボクはいろんなことを知ってるけど、それを友達に教えてあげても、『うそつき!』って言われちゃうんだよ」
ちょうど、「チョコレートってまめからできるんだって!」という章を読んだところだった。
サトイモはスネたようにこう言った。
「もしボクが『チョコレートはまめからできるんだよ』って言っても、信じてもらえないだけだよ…」
それは…、生きづらいなぁ…。
サトイモの発言を聞いて、思い出したのが小学校の担任の先生との会話だった。
これまで生き物を飼ったことがあるかという話題で、サトイモはダンゴムシの話をした。
「ダンゴムシは石とかレンガも食べるんだよ」
とサトイモが言うと、先生はこう答えた。
「石やレンガは食べないと思うけど、飼うときには一緒に入れてあげたらいいかもしれないね」
むむむむ…。
レンガについては断言できないけれど、ダンゴムシはカルシウム補給のために石やコンクリートを舐める。それはダンゴムシ界では常識だ。
6歳児の発言はいい加減なことが多いから(実際レンガを食べるかは不明)、適当にいなすのは仕方がない。
でも、サトイモにしたら「自分のほうが博識なのに」と認められなかった感が残ったのではないか。
そして、ここ数日、私の気持ちに沈んでいる雑学王のことをまた考えた。
トリビアの泉の雑学王
唐沢俊一が亡くなっていたそうだ。
昔は、唐沢俊一と村崎百郎の『社会派くんがゆく!』という時事ネタ本が好きで、毎年買って読んでいた。
唐沢俊一とソルボンヌK子の『森由岐子の世界』という貸本漫画を紹介する本も大好きだった。
唐沢俊一がサブカル系雑学王だという好意的な認識のまま、私の興味が少し薄れて以降、唐沢氏が何をしているのか全く知らなかった。
盗作問題は知っていたけど、と学会で問題を起こしたことや、右傾化していることも知らなかった。
唐沢氏の孤独死と哀悼する人の少なさについて、本人の自業自得とする人が多いようだけれど、彼も生きづらい人だったんだろうな、と思うと、ただただ悲しい。
サブカル文化の末路も、ただただ悲しい。