土曜日は、幼児教室と読み聞かせの会に通っていたが、小学校同様どちらも行き渋りが激しくて、辞めてしまった。
「せっかく土日がフリーになったんやし、キャンプでも行くか」
と夫が言い出し、先週の週末は突然、家族でキャンプに出かけた。
私はインドア派なのでキャンプなんて行きたくない。
何がうれしくて、お風呂にも入らず、トイレも我慢して、硬い石の上で眠らにゃならんのだ。
行きたい人だけで行ってほしい、というのが私の希望だったけれど、
「キャンプは家族全員で行くものだよ」
というサトイモの言葉と夫の圧力に負けて、私もついて行くことになった。
笛吹川は、清流とはこのことかと思うほどキレイな水だった。
9月も末だというのに、夫とサトイモは水着になって泳いだり(水深は深くても50センチほど)、飛び込んだりして遊んだ。(下記は岩の上から飛び込む前の画像を加工したもの。サトイモの隣にいた夫を消しゴムマジックで消したけど、水面に映っている影までは消せなかった。消しゴムマジックの限界。)
カレーにバーベキュー、そして、キャンプファイヤーをして、マシュマロを焼いて食べた。サトイモは火遊びが大好きなので、枝に火をつけては燃え移らせる遊びに夢中になった。
テントを張ったり、食事の用意をしたり、焚火を作ったりするのは全部夫がやってくれたので、私は本当についていっただけだった。
やることもないので、私は河原の石拾い。
キレイな石を集めても鉱石の種類を知らないので、Rock IdentifierというAndroidのアプリをインストールして、調べて楽しむ。
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.picturerock.rock&hl=ja&pli=1
この鑑定アプリ、同じ石なのに撮影角度によって、グリーンジャスパー(緑碧玉)と出たりアベンチュリン(インド翡翠)と出たりアマゾナイトと出たりするので、鑑定の精度にはちょっと問題があるようだ。
それでも、石のことを何も知らない私にとっては、名もなき石に名前が与えられただけでもなんだかワクワク。
今後もキャンプに来たら石拾いを趣味にしよう、と誓う。
キャンプでも発作
前回のキャンプでは、サトイモがUNOと「おにぎり屋さんカードゲーム」にはまっていたので、テント内でもカードゲームをして夜を過ごしたけれど、今回は何も持ってこなかった。
現在サトイモがはまっているのが将棋で、家にいるときは私に対戦をねだり、外出中は父の遺品のスマホに入れた将棋ゲームを四六時中やっている。
キャンプでもずっと将棋。
そんなだから、サトイモがなかなか寝ない。
狭いテント内で一人スマホなんて触られたらこっちが眠れない。
おまけにしばらくすると、
「暑いから開けて!外に出して!」
とサトイモが騒ぎだした。
テントを開けたら虫が入って来るし、夜に外に出たってろくなことがない。
だいたい、「暑いから川に入る」なんて言うから言語道断だ。
夫はロングドライブとキャンプのW疲れで(ていうか平日は普通に仕事しているんだから普通でも疲れているに決まっている)、寝袋に入った途端に気絶。サトイモがいくら大声で騒いでいても起きない。
都合の悪いことに、熟睡中の夫が出入口前にいるせいで、出たくても簡単に出られない。
「どうして外に出してくれないの!なんで邪魔をする!よくもやったな!」
サトイモがまた私を殴る蹴るし始めた。
狭いテントで暴れられたらたまらない。
最初は我慢していた私も頭にきてしまって、夫を叩き起こし、
「ワガママ言うやつは勝手に出て行け!」
とサトイモをテントから放り出そうとした。
あんなに出て行くと騒いでいたくせに、いざ外へ出されるとサトイモは、
「なんでそんなことするんだよ!やめて!」
とわめきながら中へ戻って来る。
夫は何が起こっているのかわからず、
「出たいん?出たないん?何なん?」
と目をこすっている。
「出て行かんのやったら私が出る!」
結局私が外に出て頭を冷やした。
「ママが出るならボクも~」
とサトイモも這い出てきて、私の横に座る。
私は頭に来ているので、サトイモには一瞥もくれず、黙ってスマホの記事でいとうせいこうの「『国境なき医師団』をそれでも見にいく」を読んでいた。
国を追われ、難民キャンプで苦労している人たちがいるのに、何を好き好んで我々は河原でキャンプをしているのか、とムカつく。
サトイモも黙々と将棋アプリ。
おまえらアウトドアしたいならスマホなんか持ってくるな!
囲碁将棋の会
サトイモが将棋をやるようになったのは去年で、死んだ父に「鬼滅の刃はじめての将棋&九路囲碁」を買ってもらってからだ。
生前の父とサトイモは何回か対戦できたから、今となっては良い思い出だと思う。
サトイモはコマの動かし方やルールをすぐに覚えて、将棋ゲームでも普通に対戦できるようになった。
そんな折、偶然にも今年の初夏から、町内会で囲碁将棋の会が発足した。
入会などのしばりもなく誰でも自由に参加できて、毎週水曜の午後に自治会館に集まる。
サトイモは7月にはそれに参加していた。
一回目は私もついて行ったけれど、すぐに「ママはついてこなくてもいいよ」となり、一人で参加するようになった。
参加者はほとんどおじいさん(一人だけおばあさん)。サトイモの10倍以上長く生きている人たちだ。
おじいさんたちはみんな温和でおとなしい。頑固ジジイ風の人は一人もいない。
対戦内容についてはあれこれしゃべるけれど、それ以外の会話は全然しない。
サトイモにも話しかけない。
しゃべるのは、
「そうきたか。なるほど」
「そこに打ってええんかな?」
「そこは何か手を打たんと取られてまうよ」
などなど。
来たら「こんにちは。よろしくお願いいたします」と声をかけ、対戦が終われば「ありがとうございました。さようなら」とあいさつして帰るだけ。
サトイモは八月に入って、突然その囲碁将棋の会に行かなくなった。
お行儀の悪さをおじいさんたちに注意されたり、何かやらかして怒られたりしたのかしら、と気になったけれど、サトイモがそういうことを自分から報告するわけがない。
何かあったかどうか、おじいさんたちに聞こうにも連絡先どころか名前も知らない。
今思えば、囲碁将棋の会に行かなくなった時期は、スイミングスクールでコーチの言うことをきかなくなり、幼児教室やロボット教室に行き渋った頃と重なる。
すべてがそういう時期だったのだ。
それが今週、突然また囲碁将棋の会に行くと言い出した。
実際、一人で出かけていった。
会の開始時刻はまだ学校が終わっていない時間なので、登校していれば当然遅刻なのだけれど、サトイモは学校に行っていないので高齢者同様に開始時刻からの参加である。
私は一時間後くらいに迎えに行った。
どんなふうに一時間を過ごしたか知らない。
「学校は?」とおじいさんたちはサトイモに尋ねただろうか。
いや、あのおじいさんたちはそんなこと言わないし興味ないだろう。
どちらにしても、サトイモの社会復帰第1歩だ。
毎日毎日、サトイモは将棋。
私に「将棋しよう」としつこい。一日一回が限度。それでももううんざり。
最近ようやく詰め将棋が解けるようになったので、対戦が嫌いな私は詰め将棋を出題してお茶を濁している。
夫は「俺は将棋を知らんから」の一点張り。
サトイモが対戦してほしくてどうにか教えようとするけれど、「わからん」「難しい」と上手に逃げる。
そして結局「ママ将棋しよう。一緒にあそぼ」と私に矛先が向く。
夫は将棋を知らないからこそ、
「令和の羽生になれるんちゃうか」
と期待をかける。
「いやいや、期待するのはええけど、令和の羽生は藤井聡太では?」
と私は混乱する。
「令和の藤井聡太のほうがおかしいやろ。それはただの藤井聡太やないか」
「それを言ったら羽生善治だって令和でも現役やんか」
と夫婦で不毛な議論に陥る。これについてはまだ決着がついていない。
まず「令和の〇〇」とかいう言い方をやめてくれ。