奇才サトイモの元気が出る発達日記

発達障害(ADHD&ASD)の疑いがある息子サトイモの子育て日記です。

ほとんどビョーキ、というか、ほんとにビョーキ

サトイモの睡眠時間が、長い日と短い日が交互に繰り返されている。

長い日は12時間近く眠り、起きると調子がいい。

短い日は5時間程度で、奇妙なテンションで怒りっぽい。

薬をちゃんと飲めて眠れる日もあれば、飲むのを拒否して起き続ける日もある。

先週金曜日の夜はとうとう朝まで起きていて、朝の6時にようやく寝た。6歳児が貫徹って!

 

夫は、

「いつになったら学校に行けるんかな」

と言う。

「そんなん、まだまだ行かれへんよ。今はビョーキなんやから」

と私は答える。

アーバンギャルドというバンドは、観客に対して「病気の皆さん、こんばんは~!」と呼びかけるけれど、私はここのところ、サトイモは本当に病気なんだと思うようになった。病気のお子さん、こんばんは〜!

ちょっと前、夫が、

「実はサトイモ発達障害でもなんでもなくて、ただのワガママやったらどうする? しつけができてないだけやったら?」

と真顔で言ったことがあって、ひっくり返りそうになった。

何を見ているのだろうか、この人は。

障がい、病気、いろいろ表現はあるけれど、サトイモは「普通」の枠から明らかにはみ出している。ただのワガママなわけがないじゃないか。

確かに、ときどき私の子育てが悪かった、何かを間違った、どこかで失敗した、子育てに向いていないダメな母親だ、と自分を責めることはある。

反対に、「こんなに育てにくい子どもを育てられるのは私しかおらんやろ」と誇りを持つときもある。

ほかの人はバルサ材で貯金箱を工作してるところを、うちはヒノキで千手観音を彫刻してる、それくらい難易度が高いことをやってるのだ。

私はそう思っている。今のところ。

 

不登校になってから、本田秀夫という児童精神科医の「にじいろ子育て」というYouTubeチャンネルをよく見ている。

いちいちもっともで納得でき、かつ目からウロコが落ちる。

まず一番に、不登校というのはとうとう我慢の限界がきた子どもの最終手段だという話。

そして、学校に行かないことを責めて自尊心を傷つけてしまうと、将来うつ病などの二次障害を起こす可能性が高まるので、言ってはいけないという話。

いかに二次障害を起こさないようにするかが、最も大切な課題だ。

目先の登校より、将来の幸せのほうが大切なのだから。

これについて夫にも、

「学校に行かない奴はダメな奴だ、と思わせないようにしよう」

と共有したけれど、ついつい、

「学校に行かなくて時間あるんだから家で勉強くらいしたら?」

とか、

「みんなはもうカタカナも漢字も書けるやろうに、勉強遅れてまうな」

とか、私も夫もついポロリと言ってしまう。

「学校も行かんくせに家で偉そうにしやがって、腹立つからイヤミの一つでも言いたなるやんか!」

と夫。

あかんあかん!

そういう発言をいかに我慢するか、今、親の修練が問われているんだから。

 

二次障害はとっくに?

火曜日は、朝6時に起きた。

当然睡眠不足である。

午後、放課後等デイサービスに行く。

帰り渋りがあったそうだが、問題なく過ごして帰って来た。

「どうだった?」と尋ねると、「疲れてるんだよ!」となぜか怒っている。

ごはんにふりかけをかけて一膳だけかきこみ、自分のベッドではなく大人のベッドに勝手に入ってふとんにくるまって眠ってしまった。

お風呂も入らず歯も磨かずに!と思う反面、早く寝てくれてラッキー!と私は喜んで、ゆっくりお風呂につかり、のんびり過ごす。

帰って来た夫が、

「なんか、うなされとうで」

と私に報告する。

「やめて!やめてって言ってるでしょ!やめて!」

ベッドで寝ているサトイモが怒っている。

もちろん、誰も何もしていない。

夢でも見ているんだろうか、と思ったので、明かりをつけて「大丈夫?」と声をかける。

それでも、うなされ続けているので、起こそうと身体を触ると、

「だからやめろってば!」

と蹴ってくる。

「暑いからちゃう?」

とうちわであおいだりしていると、むっくり起き上がって、泣き顔のまま、

「どうしてやめてくれないの!!もうこんな家にはいられない!!」

と玄関を出ていこうとするので、慌てて阻止した。

ベッドに連れ戻しても、「やめて!放して!」と暴れるのがだんだんひどくなる。

夫が、

YouTubeでも見せたら起きるんちゃう?」

と言うので、抱っこしてリビングに連れて行き、サトイモが今好きなタコボンドというチャンネルを見せながら、

「起きて、起きて~」

と赤ちゃんのように声をかけると、

「何をバカなことを言ってる!とっくに起きてるよ!」

と怒り、

「早く出て行かせてよ!」

と暴れる。

どこに、と尋ねても答えない。

とにかくここではないどこかへ?

「助けて~!誰か!助けて~!」

大声で叫ぶ。

抑える力を緩めると、玄関はあきらめて、今度は窓から出ようとする。

2階なので、落ちれば大ケガだ。

「ケガしてほしくないから、窓からは出ないでよ」

と言うと、

「こんなところに閉じ込められるくらいなら、頭が割れたほうがマシ!」

と返ってくる。

「死んだほうがマシだよ!!助けて~!!」

サトイモが家を出たいのはわかったけれど、夜一人で出るのは危険だし、大声で叫ばれたらご近所にも迷惑だ。

どうすればいいかわからない。

出ないように抑えつけると、なぐる蹴るひっかく。

抑えないように部屋の隅に追いやるけれど、私たちの隙をついて飛び出していく。

また抑える、暴れる、の繰り返し。

 

一番冷静な対応

今回は、これまでとは全く違った。

これまでは、何かサトイモの気に入らないことがあって、客観的には「ワガママ」の「逆ギレ」の結果として暴力が始まった。

なので、私たちも腹を立て、サトイモをねじ伏せようという気持ちだった。

でも、今回はそうではない。

「助けて~!」

と叫ぶサトイモを、私も夫もなんとかして助けてあげたかった。

誰に助けてほしい?どこに行きたい?どうすればいい?

 

結局、児童相談所「189」にかけた。

サトイモがそんなにこの家が嫌なら、施設に保護してもらうという選択肢もあると思ったからだ。

「それどこにかけとん?ほんまにつながっとう?」

と夫が尋ねるほど、神戸の児童相談所への電話はなかなかつながらなかった。

189ではなく、直接こども家庭センターにかけたほうがよかったかもしれない。

前回も思ったけれど、どこが「189=いちはやく」なの?めっちゃ遅いんですけど。

つながった先の女性は、わざとなのか、ひどくのんびりした口調だった。

事情を話すと、事務的に、今は時間外なのですぐに対応できるのは警察だけです、と言われた。

「もういいです」

と電話を切った。

しばらくすると、こども家庭センターの男性から電話がかかってきた。

我が家の担当者と同じ部署の人らしい。

夜勤だったのかたまたま残業で残っていたのか(おそらく後者)、最初に電話に出た人から連絡を受けてかけてくれたようだ。

「第三者が語り掛けたら落ち着く可能性はないですか?」

ということで、スピーカーにしてサトイモに電話で語り掛けてくれた。

「この人が助けてくれるかもしれないよ」

けれど、サトイモの態度は変わらず、逆に嫌がって電話を切ろうとする。

夫は「電話に出れるような状態ちゃうやんか」と呆れる。

でも、状況を打破するために何でもやってみないとわからないじゃないか。

「精神錯乱みたいな状態なんですけど、そういうときに対応できる場所ってないんですか」

と私が質問し、

「調べてみます」

ということで電話を切った。

 

きっかけはいつも謎

始まりも謎だけれど、終わるときも謎に終わる。

私が電話をしている間、夫がサトイモにどこに行きたいのか尋ねると、

「病院だよ!」

という具体名が出た。

いつもの小児科に行くという。

「でも、子どもだけでは行かれへんで」

と夫。

「行けるよ!」

「保険証とかいるんやで。サトイモ持っとう?」

「そんなんなくてもいいよ!」

「なかったらお金かかるで。サトイモ、なんぼかかるか知っとう?」

「そんなんウソだよ!」

「ウソちゃうで。800万円かかるんやで」

何が800万や!…と夫のウソに呆れたものの、800万という具体的な数字に、サトイモの顔がスッと変わった。

「えっ、じゃあ、ママ、800万円も持ってるかなぁ…」

突然我に返ったようだった。

「銀行からおろせる?」

「800万円もなくても、保険証があればお金はそんなにかからないんだよ。いつも窓口でカードみたいなん出すでしょう?あれだよ、あれ」

「へぇ~、知らなかった」

私がすかさず、

「のどかわいたでしょう。飲み物入れたげるから飲み」

ポカリスエットを差し出すと、サトイモはごくごく飲んだ。

「それに、夜に行っても、病院閉まっとうわ。お医者さん誰もおらへんで」

「そんなことないよ!だったらなんで入院の人がいるんだよ!」

「あれは産婦人科や。赤ちゃんが生まれる人が生んだあとのママが入院しとんや。小児科ちゃうんやで」

「知らなかった…。病院は夜やってないなんて…。じゃあ、夜に病気になった人はどうするんだよ…」

「そのために夜間救急病院ってのがあるからねぇ」

もうここまでくると、ナウシカのオウムの目が赤から青に変わるように、完全に普通の状態になっていた。

 

完全に終息してずいぶん経ってから、こども家庭センターの男性から電話がかかってきた。

結局、

「提案できる手だてとしては、私が今から伺おうかと思っていたんですが」

ということだった。

「なんとか落ち着きましたので、ご足労いただかなくてすみました」

と、私は脱力してハハハと笑った。

やはり職員個人の努力しか方法がないのか。組織的なシステムはなんとかならんのか。

仕事に一生懸命な人が過労にならないように、と思うばかりだ。

 

次の日は引っ越し

今回の件で、サトイモが病気だという思いを強くした。

なので、昨夜は夜中に突然部屋の引っ越しが始まったことにも、さほど驚かなかった。

サトイモの部屋から、ワイヤーシェリフやおもちゃ箱のコンテナ等が大人のベッドルームに運びこまれた。


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大人のベッドルームが倉庫状態になった。

これからはベッドルームがサトイモの部屋で、私たちはサトイモの勉強部屋を好きに使っていいとのことだった。


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こっちのがスッキリしてていいけども。

先日来、サトイモが大人のベッドに寝るようになったので、気の毒な夫はここ数日ソファで寝ている。

身体は痛いし、全然眠れないらしい。

家族全員が病気寸前。ていうか、すでにビョーキ。