先週末、サトイモは七五三参りを終えた。
場所はお宮参りに行った湊川神社。
(お宮参りのときの日記はこちら↓)
お宮参りとファミリア - 3歩前のことを忘れる女のサブカルと介護の記録
かつて子育て広場に通っていた頃、3歳で七五三デビューした女の子のママに、
「七五三はどこにしたの?」
と尋ねたら、
「スタジオアリス」
という答えが返ってきてびっくらこいたものだ。
お、お参りはどこいった??
とはいえ、お参りするのに衣装はいるし、衣装を着たなら撮影もしたいし、というわけで、湊川神社の武者衣装パックというのを申し込んだ。
お参りと、武者衣装のレンタルと着付け、撮影がセットになっているもの。
神社も金儲けですなぁ…。
楠木正成の神社だし、5歳の男の子限定だし(女の子で鎧兜はありえない)、お値段も羽織より安いし、ということで武者衣装にしたのだけど、これはなかなかの正解だった。
小さい武者さんは凛々しくもあり可愛らしくもあり、兜が重くて頭がゆらゆらするのもご愛嬌で、とてもよい思い出になった。
と、全体的にはそうなのだけれど。
お約束が入らない
サトイモはASDまたはADHDまたはその両方の疑いがある問題児である。
だから、大人しくじっとしていなさいと言われても、なかなかそれができない。
ただ、事前にお約束をして、本人も納得できて、気分も乗れれば、おりこうさんにできることもある。
その証拠に、電車やバスの車内で騒いだり動き回ったりしたことがない。
発達支援教室の先生が「私はサトイモくんをADHDだとするのには違和感がある」というのはそういう理由だ。
特に、最近は文字が読めるようになったので、「おやくそく」を書き出して提示すると、頭に入る確率が高くなる。
私自身が学習した成果である。
七五三も、事前によくよく言い聞かせればなんとかなる!
…はずだったのだけど、親の私も初めてで段取りがあやふやだったため、詳細に「おやくそく」させることができなかった。
口頭では話したのだけれど、それでは弱い。
だいたい、私自身が着物を着付けしてもらうことで頭の中がいっぱいだった。
死んだ母が「あんたのために」と買ってくれた着物がやたらとあるせいで、機会があれば着物を着ないともったいないのだ。
この日も、新品の訪問着と帯を持ち込んで、神社の会館で着付けてもらった。
持ち物に忘れ物がないかチェックするだけでてんてこ舞い。それなのに、補正用タオルを忘れるテイタラク。(会館で375円もするタオルを2枚買わされるはめに。)
着付け教室に通ったのに、結局自分で着ることはできずじまいとなった。
そもそも、名古屋帯の結び方しか習ってないので、持っている袋帯は結べなかった…。
私は女子更衣室、サトイモは男子更衣室に分かれる。
サトイモのほうは夫が付き添うことになっていたし、お姑さんも来てくれた。
でも、サトイモは初めての着物。
グズったり、嫌がったり、じっとできなかったりしないかな?と、心配だった。
そうなったら全てが台無しだ。
発達障害児でなくても、慣れない着物を着させられるのを嫌がる子どもはいる。
かくいう私がそうだった。
晴れ着の着付けを嫌がってダダをこね、両親は困り果てて急遽ワンピースで参拝することになったらしい。
ところが、神社(姫路の播磨国総社)に行ってみると、皆、参拝の子どもは着物を着ている。
今度はワンピースが恥ずかしくなって泣いたそうだ。
アルバムの写真には、露店でピンクレディーの綿菓子を買ってもらって機嫌が直り、笑顔の私が写っている。
さて、サトイモは?
私の着付けが終わって様子を見に行くと、サトイモの衣装もほぼ完成していて、きちんと着させてもらっていた。
男子更衣室ではアニメ『ルーニー・テューンズ』がかかっていて、狙い通り、サトイモはアニメを見ながら大人しくしていた。
「わあ!カッコいい!!」
みんなに口々に褒められて、サトイモもうれしそう。
その後の写真撮影もつつがなく終了した。
あとはご祈祷のみ!
そこで境内に出たところから、調子が緩んでしまった。
境内を走り回り、石によじ登り、御手水をバシャバシャしたがり、とにかくはしゃぐ気持ちが止まらない。
なんとか社務所に入れたものの、
「ご祈祷まであと20分お待ち下さい」
と言われて、また気持ちがダレる。
そうなってしまうと、いざ神職に案内されてお社の中に入っても、サトイモはじっと静かになんかしていられない。
「ママ〜、あれなぁに?」
とか、
「ママ〜、スマホかして〜」
とか喋りだし、神様の前で武者衣装の刀を抜いて出そうとしたり、さすがに席を立つことはなかったけれど、とにかくゴソゴソモゾモゾする。
こらこらこら!
あせる気持ちを抑えて、
「しばらく静かにしようね。またあとでね」
小声で諭すけれど、数秒後にはまたモゾモゾ。
「おりこうさんにしてたら、今日は泡風呂したげる。おりこうさんじゃなかった泡風呂しないよ」
ご褒美の条件付けも虚しく、いっこうに落ち着く気配がない。
反対側の隣に座っている夫は、力づくで押さえつけようとして、これはこれで反発される。
真後ろに座っているお姑さんは、気をそらそうと思ったのかキャンディを渡し、これが一番逆効果で、余計に気が散ってしまった。
そんなこんなで、一体何をしていたのかさっぱりわからないうちに、ご祈祷は終わった。
終了後、千歳飴とオモチャ(ダンプトラックのラジコンカー!)と風船をもらい、サトイモは大満足。
綿菓子を買ってもらって機嫌が直った私と同じだ。
終了後私はへとへとで、慣れない着物に背筋を伸ばし過ぎたせいか翌日以降腰痛が起こり、さんざんだった。
いっぽうサトイモは、「一生に一度、七五三の子どもしか食べられない特別な飴」と私が大げさに吹き込んだ千歳飴(実際はただの棒状ミルキー)を食べて、
「これおいしい!すごくおいしい!」
と大喜びだった。
「あしたもシチゴサンにいく!」
「一生に一度だって言ったでしょ!」
「イッショーってなに?らいしゅうならいける?」
「もう二度と行けないってこと!」
「え~っ!!」
子どもって…。
本来のありがとう
職場では今年も私は、給料や労務管理を担当している。
休暇の申請や健康保険の請求の関係で、同僚本人だけでなく家族を含め、病気をしたりケガをしたりといった情報が入ってくる。
お子さんが病気で入院したり、長らく通院が必要だったりという情報もそれなりに多い。
それが赤ちゃんだったりすると、他人事ながら心が痛む。
それを考えると、サトイモは少々問題児ではあるけれど、たいした病気も大きなケガもなく、よくぞ5歳まで大きくなってくれたものだと思う。
七五三までは神様のもの。
神様というか、不運に見舞われなかった運命に、素直に感謝する。
無事育ってくれてありがとう。